旅館の発電所 十数年ぶり復活 伊豆湯ヶ島の旧落合楼
東京電力の子会社東京発電(東京都)が伊豆市湯ケ島の旅館旧落合楼(現・落合楼村上)の自家水力発電施設「落合楼発電所」をリニューアルし、十数年ぶりに発電を再開させた。13日に現地で完成式典が行われ、地元住民らが狩野川の水を活用した発電施設の再稼働を祝った。同社によると、宿泊施設の敷地内にある水力発電施設は、全国的にもかなり珍しいという。
新施設は出力100キロワットで、毎秒3トンを取水し、約100メートルの導水管を通してプロペラ水車式発電機で発電する。発電分は周辺の集落に有料供給される。年間発電量は約75万キロワットで、一般家庭200軒分の発電量に相当。燃料利用時と比較し、東京ドーム47個分の森林の吸収量と同等の二酸化炭素削減効果があるという。
発電所は旧落合楼が昭和28年、狩野川上流部の本谷川と猫越川合流地点の旅館敷地内に設置し、平成の初期まで発電を続けていた。今回、伊豆に約10カ所の水力発電施設を持つ東京発電が施設を譲り受け、発電所建屋の新設や発電機の交換、取水せきや魚道の設置などの修復工事を続けていた。
「狩野川の豊富な水をうまく使った施設。当時の経営者は先見の明があったと思いますね」と同社の担当者。落合楼村上の村上昇男社長は「写真でしか見たことがない昔の水力発電所の風景がきれいに復元されて良かった。湯ケ島にはほかにも水力発電施設があるので、自然エネルギーの活用地として多くの人に認知してもらえたら」と話した。(静新06年10月14日朝刊)