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暁秀高教頭の久保田眞さん
教鞭の傍ら博士号取得.

加藤学園暁秀高教頭の久保田眞さん(56)は、静大大学院(天岸祥光学長)から理学博士の学位を授与される(授与式は二十二日)。仕事の傍ら、博士課程後期で三年間、分子生物学の研究を続けてきた。生命科学の分野は日進月歩。その成果は、高校の生物にも次々と盛り込まれてくる。久保田さんは「書物からの知識のみでは物足りない。実験をやり、論文を書くことで、DNAなど分子生物の理解が深められた。一歩踏み込んだ授業で、生徒の生命観や自然観の形成に役立てたい」と語る。博士論文の一部は英国の科学誌「エクペリメンタルバイオロジー」に掲載された。
久保田さんは東高、京大農学部卒。同大大学院修士課程では、鮎の消化酵素の研究に取り組んだ。沼津朝日記者を経て、暁秀高校に勤務。十年前に教頭となり、引き続き生物を担当している。
二〇〇三年夏、静大理学部による教員対象の公開講座に参加した時に田中滋康教授と出会い、「二、三日の研修では物足りない」と話したところ、博士課程入試に社会人特別選抜の制度があることを教わり挑戦。加藤学園の加藤正秀理事長からは「教員の勉強は必要」と通学を認めてもらった。
〇四年春から週末と、平日は勤務終了後、週二から四日間、静大に通い研究を続けた。テーマは細胞の水分子の通り道であるアクアポリン(アクアポリンの発見者のピーター・アグリ氏は〇三年にノーベル化学賞を受賞)。久保田さんはアフリカツメガエルを用いてアクアポリンが両生類でどのように働いているかを分子生物学的手法を用いて調べ、皮膚腺の分泌細胞にアクアポリン5というタイプが局在していることを突き止めた。
分子生物は久保田さんが大学を離れてから急速に進展した分野。そのためマイクロピペツトやDNAを増幅するPCR装置などの扱いは自分の娘より年下の院生に一から教わった。「最初は分からないところだらけ。この時ばかりは生徒の気持ちがよく分かった。日頃の自らの教え方に反省を迫られました」と話す久保田さん。学位取得だけなく、この三年間で得たものは非常に大きかったという。
院生の一人は「自分の父親より年上で新たな研究をやろうというのはすごい」と評価。田中教授は「現役の教員、しかも教頭先生が博士号を取るのは珍しいケース。意欲があれば久保田先生のように仕事に就いてからも最先端の勉強ができます。後に続く人が出てほしい」と語っている。(沼朝平成19年3月20日(火)号)