沼津高専前校長逮捕:文科省部長時、収賄容疑
国立大施設整備で便宜:50万円受け取る

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 国立大発注の施設整備事業で便宜を図った見返りに、大手建設会社五洋建設の子会社「ペンタビルダーズ」(東京都新宿区)の顧問から現金約五十万円を受け取ったとして、警視庁捜査二課は四日、収賄容疑で文部科学省の前文教施設企画部長、大島寛容疑者(五九)=三島市文教町一ノ四ノ六〇=を、贈賄容疑で同社顧問の倉重裕一容疑者(五八)=さいたま市浦和区常盤六ノ一三ノ二○=をそれぞれ逮捕した。大島容疑者は〇七年四月から沼津工業高等専門学校の校長を務め、〇八年四月四日付で国立高等専門学校機構本部付になった。
 捜査二課は同日午後、文部科学省や五洋建設などを家宅捜索、文教施設事業をめぐる文科省と業者の癒着の構図解明を進める。大島容疑者はキャリア技官で、文教施設整備を担当。国立大などの文教施設整備計画の企画立案や補助金の交付などを統括していた。
 倉重容疑者は、五洋建設社員から二〇〇六年三月にペンタ社顧問に就任。それ以前はペンタ社に文教施設関連の受注実績はなかったが、倉重容疑者の就任以降、校舎改修工事など約二億円分を受注している。
 調べでは、大島容疑者は同部長だった〇六年四月上旬、国立大などが発注する施設整備事業で、工事計画や補助金に関する情報提供をするなど便宜を図った見返りに、倉重容疑者から現金約五十万円を受け取った疑い。いずれも容疑を認めているという。
 大島容疑者は東北大工学部卒。〇七年三月までの二年間、文教施設企画部長を務めて文科省を退官。その後、沼津工業高専(沼津市)の校長を務めていた。二人は十年以上前からの付き合いという。
 
綱紀粛正を指示した
 渡海紀三朗文部科学相の話 大変残念な出来事で、遺憾に思っている。事務次官に対して綱紀粛正を指示した。今後、こういうことが起きないよう、襟を正して、しっかりと対応しなければならない。
(静新平成20年4月5日(土)一面)

沼津高専前校長技能五輪にも参画
学生ら「恥ずかしい」
 「まさに青天のへきれき」ー。国立大発注の施設整備事業で便宜を図った見返りに現金を受け取ったとして四日逮捕された大島寛容疑者が校長を務めていた沼津市大岡の沼津工業高専は、逮捕の一報に揺れた。学生には「優秀な技術者になり世の期待に応えてほしい」と言い聞かせていたという大島容疑者。収賄容疑に、学生や保護者からは「学校のイメージダウン。恥ずかしい」との声が漏れた。
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 国立高等専門学校機構は同日付で大島容疑者を同機構本部付とし、柳下福蔵副校長を校長事務代理とした。
 同校では午後五時すぎ、柳下校長事務代理が全職員を招集。事実関係を説明し、「動揺せず、支障なく研究、教育活動を進めてほしい」と呼び掛けた。同時に八日に入学式を迎える新入生の保護者あてに「教育活動に影響を及ぼさないよう職員を挙げて努力する」とした文書を郵送した。
 同校によると、大島容疑者は昨年四月に校長に就任。門池地区で昨年十一月に開かれた技能五輪国際大会に積極的に参画を進めた。前日まで勤務していたが、ここ一週間は遅刻や早退が多く、四日朝には「体調が悪く休ませてもらう」と連絡があったという。
 会見で学校側は「校長に備品購入などの権限はなく、五洋建設と本校とのかかわりもない」と、事件と同校との関係を否定した。
 部活帰りの四年生の男子学生(一八)は「多忙そうで接点はなかったが、見た限りではまじめそうだったのに」とショックを隠さない。別の四年生男子も「食堂などで何度かあいさつしたが、あいさつを返してくれた。逮捕されたと聞きびっくりした」と顔をこわばらせた。
 一方、五年生の女子学生(一九)は「高専に悪い印象を持たれるのは嫌だ」と学校のイメージダウンを懸念。在学生の父親(五五)は「沼津高専は全国の高専の中でもトップランナー。優秀な技術者の卵を数多く出し、地元の期待が大きいだけに非常に残念」と厳しい表情を見せた。
 
校長室など家宅捜索
 沼津市大岡の沼津工業高専には四日午後一時五十分ごろ、スーッ姿の警視庁の捜査員四人が捜査令状を手に入り、約四時間にわたり校長室と事務室を家宅捜索した。
 捜査員は書類やパスポート、名刺ホルダーなど段ボール三箱分を押収したという。午後六時すぎ、同校を足早に後にした。
春休みで校内には学生の姿は目立たなかったが、部活動帰りの学生たちが詰め掛けた報道陣にけげんな表情を浮かべた。
 
らつ腕の工ース技官
 「研究者を支えるのがわれわれの使命」。四日収賄容疑で逮捕された文部科学省の前文教施設企画部長大島寛容疑者(五九)の口癖を知る幹部は「公私の区別に最も厳しかった人だった。信じられない」と話す。
 栃木県出身で東北大工学部を卒業、一九七二年に当時の文部省に技官として入省した大島容疑者は「若いころからトップに立つだろうと言われたエース」(元同僚)。周囲の期待通り経歴を重ね、二〇〇五年から二年間、学校など全国の文教施設の整備を統括する文教施設企画部の部長を務めた。
 「研究設備を充実させなければ、日本の科学技術は世界に後れを取る」「教育環境を良くしないと子どもが駄目になる」といつも語っていた大島容疑者。〇一年から始まった「国立大学等施設緊急整備五力年計画」の策定では中心的な役割を果たした。
 大規模な公共工事などはなく"利権がない"と言われる文科省の中で、文教施設企画部は異色の部署。五力年計画では総額一兆数千億円の国費を投入するため「部長室には各地の学校や教育委員会の関係者だけでなく、民間企業の人も頻繁に出入りしていた」と元部下は振り返る。
 「政治家への根回しや財務省との予算折衝でも、言うべきことはきちんと言える人物で、ただの技術屋ではなかった」(現役幹部)。部下からも酒の席に誘われるなど慕われる上司で、沼津高専の校長に就任後も上京するたびにかつての職場に顔を出し、職員に気さくに話し掛けていたという。
(静新平成20年4月5日(土)朝刊)