文科省汚職 業者から数千万円集金 贈賄側顧問『情報』対価で わいろ原資にも
2008年4月25日 東京新聞 朝刊

 文部科学省の施設整備をめぐる汚職事件で、贈賄側の「五洋建設」子会社顧問倉重裕一容疑者(58)が、受注調整の見返りに業者から謝礼などとして集めた資金は、過去数年間で数千万円に上ることが二十四日、分かった。警視庁捜査二課は、資金の一部が、工事情報を倉重容疑者に提供したとされる同省元部長大島寛容疑者(59)へのわいろや、同省幹部の接待などに使われたとみている。

 東京地検は同日、現金五十万円を受け渡ししたとして収賄罪で大島容疑者を、贈賄罪で倉重容疑者を起訴。警視庁は、大島被告がさらに計二百二十万円を受け取ったとして、収賄容疑で再逮捕した。

 調べでは、大島容疑者は文教施設企画部技術参事官だった二〇〇四年四月に現金百万円、同部長に就任した〇五年四月には二回に分けて百万円と二十万円を倉重被告から受け取った疑い。倉重被告は贈賄罪の公訴時効(三年)が成立している。

 関係者や調べによると、倉重被告は旧文部省出身で文教族の自民党参院議員(故人)の私設秘書として、同議員事務所を拠点に活動。大島容疑者らから得た工事情報などを主に空調設備の業者などに伝えたり、受注調整したりしたとされる。

 その見返りとして倉重被告は受注業者から謝礼金を受領。金額はおおむね請負額の0・35%で、一回当たり数十万円から数百万円に上った。このほか、受注調整を行う集まりでは、二十社前後の業者から年間五万円程度の会費も受け取っていたという。

 資金の総額は最近数年間に限っても数千万円規模。調べに対して大島容疑者は、倉重被告が工事情報をどう利用するのかについて「うすうすは知っていた」と供述しているという。



文科省汚職
沼津高専前校長再逮捕へ
さらに数百万収賄容疑


 国立大学の施設整備をめぐる汚職事件で、ほかにも現金を受領していた疑いが強まったとして、警視庁捜査二課は二十三日、収賄容疑で前文部科学省文教施設企画部長大島寛容疑者(五九)=沼津工業高専前校長、三島市文教町=を再逮捕する方針を固めた。
 大島容疑者は大手建設会社の子会社顧問倉重裕一容疑者(五八)から数百万円を受領した疑いがあり、同課は癒着の解明を進める。
 調べによると、大島容疑者は国立大学が発注する施設整備をめぐり、便宜を図った謝礼などとして、倉重容疑者から数回にわたり、数百万円を受け取った疑いが持たれている。
 大島容疑者は倉重容疑者に、国立大学の校舎や研究棟などの整備計画に関する補助金情報を教えていたとみられる。
 両容疑者は十年以上前からの知り合いで、大島容疑者は飲食やゴルフの接待を受けたほか、高級スーツも受領していた。
 捜査二課は四日、二〇〇六年四月に現金約五十万円のわいろ提供があったとして、両容疑者を逮捕していた。
(静新平成20年4月24日(木)朝刊)

文科省汚職:大島容疑者、別業者からも現金受領か 総額数百万円に
 文部科学省の文教施設整備事業を巡る汚職事件で、収賄容疑で逮捕された前文科省文教施設企画部長、大島寛容疑者(59)が、別の建設業者からも現金を受け取っていた疑いのあることが関係者の話で分かった。贈賄側の「五洋建設」(東京都文京区)子会社顧問、倉重裕一容疑者(58)からの複数回のわいろと合わせ、受領総額は少なくとも数百万円に上ることも判明。警視庁捜査2課は全体の金の流れについて慎重に調べを進めている。

 大島容疑者は4日、キャリア技官トップの文教施設企画部長だった06年4月上旬、「ペンタビルダーズ」(新宿区)顧問の倉重容疑者から、国立大学法人が発注する施設整備への補助情報を漏らす見返りに現金約50万円を受け取ったとして逮捕された。

 関係者によると、大島容疑者は別の業者とも飲食などを通じて付き合いがあり、現金提供を受けた疑いのあることが分かった。旧文教施設部(現・文教施設企画部)で中枢の施設企画課長や部内ナンバー2の技術参事官を務めるなど、「文施エリート」の力に業者側が期待したとみられる。

 また、大島容疑者は倉重容疑者からゴルフや飲食などの接待をたびたび受け、約50万円以外にもわいろを手渡しで受け取っていたという。別の業者の分も含め、大島容疑者の現金受領額の総額は少なくとも数百万円に上るとみられる。

 大島容疑者は、旧文部省OBで文教族の自民党元参院議員(04年死去)の仲介などもあり、私設秘書だった倉重容疑者と付き合いを深めた。元議員は文教施設関連の受注業者約130社が名を連ねる社団法人「文教施設協会」の会長を長く務め、倉重容疑者はその威光で業界の「仕切り役」に上り詰めた。大島容疑者に決裁権限がある大学などの施設補助予算は年間約400億円で、業者は分け前を求めて「倉重容疑者詣で」をしていたという。【鳴海崇、杉本修作】

毎日新聞 2008年4月7日 東京朝刊




「業者と海外旅行、ゴルフ」
文科省前部長・繰り返し接待受ける?
 国立大学の施設整備をめぐる汚職事件で、収賄容疑で逮捕された前文部科学省文教施設企画部長大島寛容疑者(五九)=沼津工業高専前校長、三島市文教町=が、贈賄側業者とともに海外旅行やゴルフをしていたことが五日、警視庁捜査二課の調べで分かった。同容疑者は飲食を含めた接待を繰り返し受けていた疑いがあり、同課は文科省などから押収した資料の分析をして不正の全容を追及している。
 調べによると、大島容疑者は十年以上前、贈賄容疑で逮捕された倉重裕一容疑者(五八)と知り合った。同容疑者は五洋建設出身で、わいろ提供当時は子会社「ペンタビルダーズ」の顧問をしていた。
 両容疑者は飲食や海外旅行、ゴルフを重ねた末に、大島容疑者は国立大学が発注する施設整備計画の補助金情報などを教えるようになり、二〇〇六年四月上旬、逮捕容疑となった現金約五十万円を受け取った。
 大島容疑者は国立大学の校舎や研究棟に関する整備計画の企画立案を担当。工事予定や予算を把握する立場にあった。
 ペンタ社側は大島容疑者からの情報を基に、大学側に工事受注を働き掛けたとみられ、同社は〇六年四月以降、電気通信大学などの施設改修で約二億円分を受注したが、以前は受注実績がほとんどなかったという。
 大島容疑者は二〇〇〇年四月、文教施設部(当時)計画課長に就任。同部の課長を歴任し、〇五年四月から文教施設企画部長を務めていた。

 談合追及に否定答弁:国会で前部長
 国立大学の施設整備発注をめぐっては、国会で二年前、文部科学省OBが業者に天下って親睦(しんぼく)会を結成し、一部で受注工作をしているとの談合疑惑が指摘された。これに対し、収賄容疑で逮捕された文教施設企画部長だった大島寛容疑者(五九)が「指摘は当たらない」と答弁していた。
 二〇〇六年三月に開かれた参院予算委員会で、共産党の井上哲士議員が入手した資料を基に、「文施OB会」と呼ばれる親睦会の存在を指摘した。
 それによると、元職員ら約百六十人が在籍し、業者の分野ごとに「櫟(くぬぎ)の会」などの名前が付いた四つの小グループに分かれていた。一般業者は通常、同省内で名刺を置くだけしか認められないが、OB会メンバーはフリーパスで幹部と茶を飲みながら面談できたという。
 さらに、同省が議員に開示した資料によると、〇一年度から〇四年度の間に同省が発注した一億円以上の工事七十一件のうち、OBの在籍する企業が受注したのは四十八件。契約金額は六百四十四億七千九百万円で、全体の八割に上ったという。
 こうした状況について、同議員は「談合ではないか」と追及。大島容疑者は政府参考人として答弁に立ち、「透明性の高い入札が行われてい答弁に立ち、「透明性の高い入札が行われている」と述べ、疑惑否定に終始した。
(静新平成20年4月5日夕刊)





「わいろ、遊興に使う」
文科省前部長:利益供与・数百万円相当か
 国立大学の施設整備をめぐる汚職事件で、収賄容疑で逮捕された前文部科学省文教施設企画部長大島寛容疑者(五九)=沼津工業高専前校長、三島市文教町=が、わいろを遊興費に使っていたことが五日、警視庁捜査二課の調べで分かった。逮捕容疑の約五十万円以外にも、贈賄側から現金を受領した疑いが浮上。同課は利益供与総額が数百万円相当に上る可能性があるとみて調べている。
 大島容疑者は二〇〇六年四月上旬、国立大学が発注する施設整備計画の補助金情報を教えた見返りに、五洋建設の子会社「ペンタビルダーズ」顧問倉重裕一容疑者(五八)から現金約五十万円を受け取ったとして逮捕された。
 調べによると、大島容疑者は手渡しでわいろを受領し、遊興費に充当。倉重容疑者は五洋建設出身で、二人は十年以上前に知り合い、同容疑者は密接な関係を築こうと働き掛けたとみられる。
 二人は海外旅行やゴルフをしていたほか、大島容疑者は逮捕容疑以外にも現金を受領。捜査二課は接待も含めて数百万円相当の利益供与があったとみて調べている。
 大島容疑者は二〇〇〇年四月に文教施設部(当時)計画課長に就任。参事官も歴任し、わいろ受領時は国立大学の施設整備の企画立案を統括する文教施設企画部長だった。
 ペンタ社側は事業受注に、大島容疑者から得た情報を活用。〇五年度まではほとんど受注がなかったのに、〇六年四月以降の受注額は電気通信大学の改修工事などで、少なくとも二億円に急増させたという。
(静新平成20年4月6日(日)朝