「東名崩落の教訓」
無料化の前提は渋滞対策
東名高速道路は先月11日の駿河湾を震源とする地震で牧之原市内で路肩が崩落し、全面開通まで5日間にわたって通行止めになった。迂回(うかい)路になった中央自動車道や県内の国道1号、同バイパスなどで大渋滞が発生し、国土交通省の試算だと損失額は約21億円に上った。
巨額にあらためて驚くが、実は渋滞の巻き添えを食った地元の経済損失はこれには含まれない。試算はあくまで渋滞で乗車している人の時間的な損失を金額換算したもので、乗用車の場合1台に1・3人乗って1分当たり40円を損失単価として、はじき出した金額だ。
しかし、いつもなら東名を高速で通過していく大量の車両に生活道路まで埋められ地域の経済活動や日常生活上の損害を見て見ぬふりをしてもらっては困る。生鮮品の配送が遅れ、日時指定の宅配便が1日遅れになった。到着時間が読めなく、商売にならなかったという。
今回の地震で、東名の問題点が浮き彫りになった。一つは地震による崩落の危険性。早急に全線をチェックし、耐震補強工事を実施すべきだ。もう一つが、ひとたび止まると周辺の生活道路まで含めて地域交通がマヒしてしまうことだ。
そもそも東名の通行量は普段から危険なレベルにある。今年3月の調査だと1日平均通行台数は42万4100台に上るが、同じ東京起点の中央高速は26万4850台、関越自動車道は19万7827台と東名の半分以下だ。
加えて通行料がETCで休日上限千円乗り放題となって渋滞回数が急増した。民主党への政権交代でさらに高速道路の無料化が実現すれば東名の混雑はどうなるか。利用者にはタダの方がいいに決まっているが、渋滞を慢性化させ、トラックやバスなどプロドライバー泣かせにならないか心配だ。時間指定の宅配便に限らず、プロには渋滞で時間が読めないのは致命的な欠陥だ。
東名崩落による大渋滞の教訓を生かすとすれば、迂回路にもなる第2東名を高速道路無料化の前に開通させておくことだと思う。今のところ引佐JCTー御殿場IC間の供用目標は2012年だ。中央の反対論者は、第2東名を無駄な公共事業だとこれまでヤリ玉に挙げてきたが、新政権は1日も早い開通を打ち出してもらいたい。(論説委員・山本哲夫)
(静新平成21年9月3日「地論地評」)
無料化の前提は渋滞対策
東名高速道路は先月11日の駿河湾を震源とする地震で牧之原市内で路肩が崩落し、全面開通まで5日間にわたって通行止めになった。迂回(うかい)路になった中央自動車道や県内の国道1号、同バイパスなどで大渋滞が発生し、国土交通省の試算だと損失額は約21億円に上った。
巨額にあらためて驚くが、実は渋滞の巻き添えを食った地元の経済損失はこれには含まれない。試算はあくまで渋滞で乗車している人の時間的な損失を金額換算したもので、乗用車の場合1台に1・3人乗って1分当たり40円を損失単価として、はじき出した金額だ。
しかし、いつもなら東名を高速で通過していく大量の車両に生活道路まで埋められ地域の経済活動や日常生活上の損害を見て見ぬふりをしてもらっては困る。生鮮品の配送が遅れ、日時指定の宅配便が1日遅れになった。到着時間が読めなく、商売にならなかったという。
今回の地震で、東名の問題点が浮き彫りになった。一つは地震による崩落の危険性。早急に全線をチェックし、耐震補強工事を実施すべきだ。もう一つが、ひとたび止まると周辺の生活道路まで含めて地域交通がマヒしてしまうことだ。
そもそも東名の通行量は普段から危険なレベルにある。今年3月の調査だと1日平均通行台数は42万4100台に上るが、同じ東京起点の中央高速は26万4850台、関越自動車道は19万7827台と東名の半分以下だ。
加えて通行料がETCで休日上限千円乗り放題となって渋滞回数が急増した。民主党への政権交代でさらに高速道路の無料化が実現すれば東名の混雑はどうなるか。利用者にはタダの方がいいに決まっているが、渋滞を慢性化させ、トラックやバスなどプロドライバー泣かせにならないか心配だ。時間指定の宅配便に限らず、プロには渋滞で時間が読めないのは致命的な欠陥だ。
東名崩落による大渋滞の教訓を生かすとすれば、迂回路にもなる第2東名を高速道路無料化の前に開通させておくことだと思う。今のところ引佐JCTー御殿場IC間の供用目標は2012年だ。中央の反対論者は、第2東名を無駄な公共事業だとこれまでヤリ玉に挙げてきたが、新政権は1日も早い開通を打ち出してもらいたい。(論説委員・山本哲夫)
(静新平成21年9月3日「地論地評」)