検証・沼津市10年度予算案 下

 基盤整備進むも危機感


100205-01 旧戸田村が沼津市に編入合併して
5年がたった。新市建設計画も期限10年の折り返し地点を迎え、旧市村で結んだ72"約束事"はすでに8割以上が着手された。「戸田村ではできなかった大規模事業を、沼津市がやってくれている」(元村議)と合併効果を評価する声もあれば、「合理化の影響に見合うだけの効果が実感できない」(民宿経営者)と否定的な意見もー。地域住民の受け止め方はばらばらだ。

 沼津市は、新年度の当初予算案に戸田地域活性化センター(仮称)の整備費7900万円を盛り込んだ。旧戸田村の当初予算に匹敵する総額15億円規模の事業で、同計画の目玉の一つに位置付けられている。

 戸田の市民窓口事務所(旧村役場)は津波危険区域内にある。防災拠点施設はなく、避難地は市道が指定され住民は災害時に路上でのテント生活を迫られかねない。センターはこうした課題を解決し、老朽化が進む「壱の湯」や「老人憩の家」、観光案内などの機能を集約した施設として、隣接する県の中山間地域活性化施設と連携を図る。民設民営から公設へと若干の遠回りがあっただけに、合併協の委員を務めた元村議の山口純一さん(63)は「ようやく実現のめどが立った」と胸をなで下ろす。

 新市建設計画ですでに着手した62事業分の予算総額は概算で65億円。防災ヘリポート整備や高規格救急車導入、戸田から市街地への動脈に当たる県道整備など6事業は完了した。暮らしに直結する基盤整備は着々と進行している。

 合併後の戸田は「魅力的な観光レクリエーション基地」と位置付けられているものの、かつて40万人が訪れた海水浴客は4万人に減り、観光業界は「伊豆縦貫道が完成すれば、客足はさらに遠のく」と危機感を募らせる。戸田特有の地域資源をどう生かして誘客につなげるか、センターの整備後を見据えた取り組みも期待される。

 「沼津の南端ゆえに、交通アクセスが戸田の生死を分ける」と地元市議の水口淳氏は指摘する。「東名の休日特別割引で、旅行客が以前より混雑を意識するようになった。大型バスも含め、こうした客が沼津イン

ターからすっと市街地を抜けられるようにしないと」。中心部の渋滞解消策が戸田に与える影響を強調した。(東部総局・海野俊也、大須賀伸江が担当しました)

(静新平成2225日朝刊)