「あさぎり号」沼津乗り入れ廃止へ


 来年
317日のダイヤ改正で

 97年ピークに利用客減少 運行開始から20年余の歴史に幕

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 沼津ー新宿間を乗り換えなしで結ぶ特急「あさぎり号」
(全席指定)が、来年三月十七日のダイヤ改正で沼津ー御殿場間の運行が廃止となる。JR東海静岡支店の営業担当部長や沼津駅長ら五人は十六日、市役所に栗原裕康市長を訪ね、ダイヤ改正に伴う「あさぎり号」の発菅駅の変更を報告した。一九九一年三月十六日の運行開始以来、首都圏の観光客らを沼津に運んだ公共交通が二十年余の歴史を終える。

 『沼津市史』の通史編現代には「あさぎり号の運行は一日上下四本ずつ、JR東海と小田急が半分ずつを受け持ち、沼津・新宿の所要時間は最短で一時間五十八分、(中略)料金は沼津・新宿間で二千九百八十円。沼津から三島へ出て新幹線を利用し、東京駅経由で新宿へ行った場合と比べると千円安い」とある。

 また、観光への効果として「新宿を中心とした首都圏から県東部への足はぐっと便利になり、推定乗降客は沼津駅で年間七十万人が見込まれ、伊豆方面への観光客の増加が期待される」と記述。

 運行開始の一年間で東京方面から沼津

へ来た人は二十一万人を超え、一日当たりでは約五百八十人。その後の「あさぎり号」利用者は、九七年をピークに減少の一途をたどっている。

 現在、沼津発は午前八時、十時半、午後三時半、五時半、沼津着は午前九時二十四分、午後零時十八分、三時五十一分、七時四十三分の上下四本ずつ。所要時間は運行開始時と変わらない。

 しかし、乗車料金は運行開始時から上昇。繁忙期(春休み、ゴールデンウイーク、夏休み、冬休み)が三千六百八十円、閑散期(一月十六日ー二月末、六月、九月、十一月一日から十二月二十日の月曜から木曜日)が三千二百八十円、これ以外の通常期が三千四百八十円。

 JR東海は、首都圏から御殿場までは富士山やアウトレットなどを訪れる利用客があるものの、御殿場ー沼津間の利用客は数少なく運行廃止を決断したようだ。

 現在、沼津と新宿を結ぶ公共交通は、鉄道のほか高速バスがある。

 例えば鉄道利用の場合、沼津から東海道線、新幹線、山手線経由で新宿へ行くと、グリーン車を利用しない自由席料金は三千八百九十円、所要時間は約一時間半。

 沼津から東海道線、小田原からJRの湘南・新宿ライン特別快速で新宿までは、自由席料金二千二百十円、時間は約二時間十五分。沼津から東海道線、小田原から小田急の急行に乗ると料金は千五百九十円、時間は約二時間四十分。

 一方のバスは、沼津駅北口広場バスターミナルから東名高速、首都高速経由の新宿までの料金は片道二千百円、平日往復切符で三千円、時間は、交通量に左右され鉄道の定時制に劣るが予定では二時間半となっている。

 所要時間、料金、運行本数で「あさぎり号」の他ルートに比べた優劣は分からないが、観光面でのマイナスは避けられない。市商工振興課の杉山正人課長は「実際、乗客が少ないことを実感しているので、なくなるのは仕方ない」と落胆は隠せない。

 なお、ダイヤ改正後の御殿場ー新宿間の運転本数は一日三往復に減便され、利用の多い土・日曜と祝日は臨時列車一往復が追加され四往復となる。

(沼朝平成231223日号)