2015年06月26日04時18分13秒0001高尾山古墳保存陳情で連合審査

 市議会文消委と建水委で大別3つの意見

 高尾山古墳(東熊堂)の保存を要望する市民グループからの陳情害を対象にした市議会文教消防委員会(梶泰久委員長)と建設水道委員会(水口淳委員長)による連合審査会が二十三日に開かれた。両委員会所属議員十四人が出席し、梶委員長が議事の進行役を務めた。

 高尾山古墳を巡っては、都市計画道路沼津南一色線建設のために古墳解体を伴う調査を実施する予算案が二十四日の一般会計予算決算委員会で可決されている。

 今回の陳情書は、金岡地区の住民有志らによる「高尾山古墳を守る市民の会」、考古学専門家らで構成される「高尾山古墳を考える会」、インターネット上での署名活動などを展開する「高尾山古墳の保存を望む会」の三団体によって今月十六日に提出されていた。

 三団体は、三世紀前半に築造された東日本最古級である高尾山古墳の価値を重視し、現状を保ったままでの古墳保存を要望している。

 審査会で発言した委員の意見は、主に三つに分けられる。①陳情以前に市側に提出された門池地区岡宮自治会や金岡地区五自治会による道路整備推進の要望書を重視するもの。②古墳の価値や古墳解体方針などへの市民の理解が深まっていないので解体調査実施の決定を急ぐべきではないとするもの。③高尾山古墳は学術的に非常に貴重な古墳であるからこそ解体調査を行うべきというもの。

 道路重視 ①の立場の加藤元章委員(所属委員会・建水委、志政会)は、連合審査会の場に配布されていなかった自治会要望害の提出と内容説明を求めた。

 市側は要望書の内容について、東熊堂では道路建設用地確保のために宅

地移転などで協力していること、付近では交通事故が多発していて道路改良が必要であること、渋滞発生のため排気ガスなどで生活環境が悪化していること、などの点から道路の建設推進が要望されていることを説明した。

 続いて加藤委員は、沼津南一色線の建設中断によって生じている学園通りの渋滞問題を指摘。建設終了後の共栄町交差点(学園通りと国道一号の交差点)の交通量の変化予測について質問した。

 道路建設課の後藤久課長は、平成二十一年度交通量調査による二万台という数字を挙げ、建設により半減する、との見通しを述べた。

 また、加藤委員は古墳に観光的価値があるのかを尋ねた。

 市教委文化財センターの池谷信之主幹は、長野県の森将軍塚古墳(四世紀築造)が同県内指折りの観光地になっていることなどを挙げ、整備次第であるとした。

 古墳重視 ②の立場の殿岡修委員(建水委、未来の風)と梅沢弘委員(文消委、無所属)は、今回の陳情書のみならず、日本考古学協会による古墳保存要望の会長声明も重視。また、古墳解体方針が市民に知らされていない状態で解体調査予算案提出が行われたことから、古墳についての結論を現時点で出すのは尚早ではないかと意見を述べた。

 これに対し井原正利教育次長は、予算案の提出は様々な検討を経た結果だと説明。

 また、殿岡委員は、道路設計上の理由で沼津南一色線と高尾山古墳保存の両立は不可能であるとする市側の見解に疑問を呈し、現行の計画では時速六〇㌔用の道路となっているのを、低速用の道路に設計変更すれば技術的問題はクリアできるのではないかと指摘し、交通安全上の理由からも道路の低速化が望ましいと述べた。

 これに対して後藤課長は、速度変更を検討対象にはできない、と答えた。

 梅沢委員は有識者を交えた公聴会などによる審議を経たうえで古墳問題の結論を出すべきだとし、古墳調査予算案の取り下げか執行凍結を求めたが、梶委員長は「会計は審査会の所管外」として、この場において梅沢委員の主張は正当ではないとの判断を下した。

 調査重視 ③の立場で意見を述べたのは、渡部一二実委員(市民クラブ)、城内務委員(公明党)、頼重秀一委員(志政会)の三人で、いずれも文消委所属。

 この立場からは、古墳を現状のまま保存しても考古学の研究には貢献しないので、古墳を解体しながらの調査を進めることによって貴重な調査結果を得るべきだと主張。

 解体調査について得られる成果について質問を受けた池谷主幹は、高尾山古墳のような初期古墳が解体調査を受けた例は非常に少ないこと、古墳を解体することで古墳の建築技法に関する調査が可能になることなどを説明した。

 これらの主張の中で城内委員は、古墳が発見されてから現在までには十分な時間があったとし、今回の陳情書を出した人達がこれまでに市側へ保存を要望してこなかった点について疑問を呈した。その一方で、市側が予定している解体調査の方法やスケジュールを市民に周知することの重要

性も述べた。

 事実関係整理三つの立場からの意見とは別に川口三男委員(建水委、共産党市議団)は、市の方針に対する文化庁の対応について質問した。

 井原教育次長は、文化庁とは協議をしていたことを話し、解体調査の実施については文化庁の了承を得ている、とした。また、川口委員は古墳問題に対する栗原裕康市長の発言について質問。道路建設を進めると言う一方で、「やみくもに道路建設を強行するものではない」ともしている曖昧(あいまい)な言動の真意を確認した。

 審査会には市長は出席していないので、藤岡啓太郎副市長が代わりに答弁し、「関係機関と綿密に調整を行う」とする市長の立場を説明した。

 結論 市議会居への陳情は、請願と異なり何らかの議決を求めるものではないため、合同審査会でも陳情趣旨を市議会として受け入れることに対する採決は行われ中なかった。議事の進行役を務めた梶委員長は「陳情書を貴重な意見として受け止めてほしい」との意見を市当局に伝えて審査会は終了した。

【沼朝平成27626()号】

 

 古墳の認識深める議論なかった

 「高尾山古墳を守る市民の会」杉山治孝代表

 連合審査会を傍聴した「高尾山古墳を守る市民の会」の杉山治孝代表は、審査会の感想について「陳情書を、こうした形で取り上げていただいたことに感謝している。しかし、高尾山古墳の価値についての議論が深まらなかったのは、少々残念。沼津市が文化をどう扱うのか、沼津をどのようなまちにしていきたいのか、といった大きな視点での議論も期待していたが、『道路か古墳か』という話になりがちだった印象もある。私達は『古墳を残してほしい』と言っているのであって、『道路を造るな』とは言っていない。また、古墳保存を要望することが悪いことだと言いたいような意見も見受けられたが、郷土の文化や歴史を守ろうと主張することは、果たして悪いことなのだろうか」と話した。

【沼朝平成27626()号】