「生まれ変わった芹沢文学館」
 記念館として再出発、展示室貸し出しも
 1、2階で企画展
 芹沢翁と沼津、古墳テーマに

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 我入道まんだが原の芹沢光治良文学館が沼津市に寄贈され、芹沢光治良記念館として生まれ変わり、このほどオープニングセレモニーが行われたのに続き、二種類の企画展が開かれている。企画展は、一階で「芹沢光治良と沼津」のテーマ、二階では「沼津の古墳とスルガの王権」と題して行われ、一階は来年五月いっぱいへ二階は当分の間の開催となっている。
 旧文学館は昭和四十五年、当時の駿河銀行(現スルガ銀行)頭取、岡野喜一郎氏(故人)が財団を設立して建設。建築家の菊竹清訓氏が設計した。鉄筋コンクリート二階建て、壁構造の小室を四本柱のように四隅に配した建物で、内外共にコンクリート打ちっぱなしが特徴。一階に展示室とトイレ、事務室、二階に展示室と収蔵庫がある。今年四月、財団から沼津市に寄贈され、記念館として再スタートを切った。
 開館時間は午前九時から午後四時半(入館は閉館の三十分前まで)。休館は毎週月曜(休日にあたる時は、その翌日)、休日の翌日(土・日曜、祝日を除く)、十二月二十九日から一月三日。入館料は大人百円、子ども五十円で、市内の小中学生は無料。
 オープニングセレモニーで栗原裕康市長は、「芹沢先生は郷土が生んだ偉大な作家。喜一郎翁が、先生の功績を具体的な形にして残したい、と文学館を建てられた。今回、改めて記念館として再出発するに際して、少し展示スペースを譲ってもらい、先生を知ってもらいながら、多くの人に来ていただけるようにした。今後、市民交流の場、外からやって来る人の安らぎの場、そして鑑賞に堪えうる施設にしていきたい」と語った。
 来賓の財団法人井上靖文学館理事長の岡野光喜スルガ銀行社長は、文学館建設の頃を振り返りながら、「館の立ち上げの最初から関わり、今また、ここに新たな方向に向かう旅立ちの時に立ち会い感無量」だとした上で、「沼津市の新しい使命、次代を担う子ども達が、本を読み、これからのまちづくりに資するための施設になっていくように」と期待を寄せた。
 また、芹沢翁の娘の岡玲子さんは芹沢文学が日本や世界の愛読者に広がっていることに触れながら、生まれ変わった施設が、ますます活用されることを望んだ。
 この後、芹沢翁が作詞・作曲した香貫小の校歌が同校六年生によって歌われ、セレモニーを終了。出席者は館内に入り、企画展を見学した。
 一方、企画展のうち一階では、旧制沼中時代の写真をはじめ、関わり深い人達の紹介、香貫小校歌の詞が書かれた原稿など、同館収蔵品だけでなく、遺族や研究者らから借り受けたものも含めて展示され、沼津の芹沢翁に迫っている。
 二階では、石川古墳群(六世紀後半から七世紀中葉)や沼津の前方後円墳である神明塚(松長、四世紀前半)、子ノ神(西沢田、五世紀後半)、長塚(六世紀前半、東沢田)の各古墳、足高の清水柳北遺跡一号墳(上円下方墳、八世紀前半)、それに最近注目された東熊堂の前方後方墳などについて、写真パネルや出土品等が展示され、馬具や太刀、金環、勾玉や管玉、高杯(たかつき)、壷などが並ぶ。
 横浜市から来館していた女性二人連れのうち梶本実津枝さんは、芹沢作品をほとんど読み、以前は文学館友の会にも入っていた、といい、「先生の『人間の運命』を読んで感動した。先生は人生の師」だと話していた。
 なお、二階展示室は一般への貸し出しも行われ、申し込みを受け付けている。
 問い合わせは同記念館(電話九三二ー〇二五五)。
(沼朝平成21年11月1日(日)号)