モントリオール世界映画
「わが母の記」特別賞
カナダで開催されていた第35回モントリオール世界映画祭で29日午前(現地時間28日夜)、伊豆ゆかりの文豪井上靖の自伝的小説をもとに県東部などで撮影した映画「わが母の記」(原田真人監督11沼津市出身)が、最高賞に次ぐ審査員特別グランプリに輝いた。
幼いころ実母に育てられなかった小説家が、老いて記憶を無くしていく母を温かなまなざしで見つめ、家族3世代の絆を描いている。役所広司さん、樹木希林さん、宮崎あおいさんらが出演し、今年2~3月にかけて伊豆市湯ケ島や沼津市などで撮影された。来年公開予定。
国内からはほかにも、さだまさしさんの小説を映画化した「アントキノイノチ」(瀬々敬久監督)が、革新的で質の高い作品に贈られるイノベーションアワードに選ばれた。
★モントリオール世界映画祭 北米最大規模の映画祭。昨年、「悪人」の深津絵里さんが最優秀女優賞を受賞したほか、2006年に奥田瑛二監督の「長い散歩」、08年に滝田洋二郎監督の「おくりびと」がそれぞれ最高賞のグランプリを受賞するなど、日本映画が高く評価されている。
舞台の沼津・伊豆歓喜
「美しさ見てほしい」
原田真人監督の映画「わが母の記」が29日、モントリオール世界映画祭で最高賞に次ぐ審査員特別グランプリ受賞したとの一報に、ロケを誘致した沼津市や伊豆市の関係者から、喜びの声が上がった。
「県東部で全面支援した作品で、このような国際的な賞を受けたのは初めてでは」。沼津商工会議所・ハリプロ映像協会の飯島充子さんは声を弾ませた。原田真人監督から「撮影地を探してくれないか」と依頼を受けたのは、2009年12月。真冬の風が吹く中、古民家や渓谷を案内した。
地元を重んじる原田監督の意向もあって、作品の半分以上が、伊豆市と沼津市を舞台に撮影された。飯島さんは「井上靖が描いた家族愛と、両市の自然美があいまって、世界的な評価を受けたことがうれしい」と話した。
主人公の少年期を演じた沼津市立大岡小6年の土屋風丸君(12)は、「一生懸命演技したのでうれしい」と率直に感想を語った。
伊豆市の菊地豊市長は「一人でも多くの人に伊豆、沼津の美しさを見てほしい」、沼津市の栗原裕康市長は「地元の人間として誇らしい。世界的な知名度を高めるきっかけになれば」と願った。
【静新平成23年8月29日(月)夕刊】