商都に衝撃 上 西武沼津店閉店
薄れるステータス 官民で打開策探る
西武沼津店の閉店発表翌日の28日、沼津商工会議所の2階会議室は重苦しい雰囲気に包まれた。沼津市中心市街地活性化協議会の本年度初会合。事業報告など定例の議案承認に続き、西武撤退後の対策を検討する小委員会の設置案を急きょ上程し、決議した。
「こうなることはうすうす気付いていた。宿題をやってなかった子供のような気持ち」「危機をチャンスに変えるという選択肢しかない」。市内の経済団体などを代表する委員の口からは、自己批判を含む厳しい意見が相次いだ。
西武沼津店がピーク売り上げの206億円を記録した1992年2月期に、沼津市の中心商業地の大型店の総店舗面積は約7万平方㍍あった。現在は1割減の約6万3千平方㍍。ただ、このうち約1万1千平方㍍を占める富士急百貨店は2010年から営業規模を大幅縮小したまま。西武沼津店(約9800平方㍍)の撤退後は実質で20年前の6割程度まで減る。
「丸井(04年閉店)、東急(ホテル、11年撤退)、西武と全国ブランドが消える。街のステータスも薄れる」。駅南口の個人事業主はそうつぶやき、「西武の件で商業者の意識は高まった。何か起こすなら今だ」と言葉に力を込めた。
協議会はこれまで、市中心市街地活性化基本計画の審議に加え、先進例の調査、セミナーなどを重ねてきた。直近では今月8日、大分市から講師を迎え、まちづくり会社による空き店舗対策の実例を学んだ。会長を務める市川厚沼津商議所会頭は「勉強ばかりで行動が追い付いていなかったという思いがある。完壁な計画ではなくても、可能な部分から実践へと踏み出したい」と強調する。
協議会が設置した小委員会「まちづくり部会」は今後、栗原裕康市長が27日に立ち上げた庁内組織「沼津駅前都市機能検討委員会」と連携し、中心市街地の再生策を練る。
あるデベロッパーは「駅前に閑散とした感はあるが、沼津市としての購買力は依然高い。郊外、中心部とも出店希望は多い。だが、民間だけで中心街を再生するのは困難。行政が従来にも増して覚悟を見せるべき」と指摘した。
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JR沼津駅南口で半世紀以上にわたり「商都の顔」を担った西武沼津店が来年1月に閉店する。かつて商圏人口120万人を誇った沼津の中心商業地は、郊外店の台頭、大型店の撤退などで縮小の一途だ。都市の玄関と商業の再生は可能なのか。復権を目指す動きを探る。
(静新平成24年6月30日朝刊)