沼津第一中学校2年B組文集より(昭和30年)
商30年沼津の未来 

 沼津の産業観光について

 (2)千野慎一郎

 誰でも自分の住んでいる土地の発展を願いますが、沼津市は地勢や位置からいって将来必ず大発展すると期待しています。日頃僕が考えている大沼津の構想の一端を述べる事は大変愉快であります。郷土の発展には先ず産業の発展がなくては成り立ちません。産業の発展には、海・陸交通の便利な事と、電力・水道の供給が第一に必要です。幸い、どちらも今後ますます供給されると新聞等で聞いております。

 次には、港湾の施設を清水に次ぐ貿易港の規模にすべきだと思います。先年進駐軍の物資を荷上げするために一億円か二億円で始めるような話を聞きました。海上からの物資の集散地ともなれば、色々な大工場の誘致も問題がありません。これによって、生産も消費も増大し、沼津は活が出る事と思います。港湾の施設と同時に遠洋漁業の基地ともいえる漁業の計画も忘れる事は出来ません。水産物の加工工場も他の施設と共に交通の要衝地沼津は、東西どこの消費地にも出荷出来ます。そして、農地と工地帯と衛生的な住宅地を計画的に集中し、道路と下水を整備すべきです。

 さて、観光はどうでしょう。千本松原三津、大瀬等の観光地がありますが、まだ十分ではありません。香貫山や門池のように市民に親しまれている所が数多くありますが、交通や設備が不十分で、市民以外には余り知られていない。

 ですから、先ず始めに、香貫山にアスファルト道路をめぐらし、頂上には見晴し台や天文台の施設を設け、子供の遊園地を作れば、四方の展望が良いのですから日本平以上の観光地になると思います。

 三津の発端丈山は、淡島、愛鷹山のバックに富士を望む景色は、達磨山以上でしょう。残念ながら、道路も観光施設もないことです。

 最近県では伊豆の循環鉄道を敷く計画を立てているようですが、沼津より三津大瀬を通り、松崎、下田を通って伊東へ抜ける鉄道が敷ければ、時間は短縮するし、観光客が増え、沼津は伊豆の西玄関口として、温泉こそないけれど、四季を通じて来客が増え、商業が発展することは間違いありません。そうすれば、熱海伊東と並んで観光都市となるでしよう。

 二Bの諸君が大きくなって、ああ、あの頃は良かったと考える頃は、沼津はどんな変化をしているでしょう。それは、その時のお楽しみ。