2015年06月

高尾山古墳保存へ要望書 3市民団体、知事に提出決定

 高尾山古墳保存へ要望書

3市民団体、知事に提出決定 沼津で会合

 沼津市が道路整備のために発掘調査しながら取り壊すことを決めた高尾山古墳(同市東熊堂)をめぐり、保存を求める3市民団体は28日、川勝平太知事に要望書を提出するとともに、7月中旬から街頭署名活動を実施することを決めた。

 「高尾山古墳を守る市民の会」(杉山治孝代表)、「高尾山古墳を考える会」(瀬川裕市郎代表)、「高尾山古墳の保存を望む会」(吉田由美子代表)3団体が同日、市内で全体会議を開いた。各代表が活動経過を説明し、市民らに広く理解を求めていく方針で一致した。711日には静岡大の篠原和大教授を講師に迎えた学習会も開く予定。3団体は今月16日に市議会議長に古墳保存を求める陳情書を提出した。

【静新平成27629()朝刊】

知事会見 「保存と道路両立を」

知事会見 「保存と道路両立を」

 沼津・高尾山古墳検討促す

 川勝平太知事は25日の定例記者会見で、沼津市が道路整備のため発掘調査しながら取り壊す方針を決めた高尾山古墳(同市東熊堂)に関し、保存と道路整備を両立させる方法を検討すべきとの考えを示した。

 知事は昨秋に日本考古学協会や沼津市の関係看と高尾山古墳を視察したと明らかにし「卑弥呼(ひみこ)の時代の古墳で貴重だ。古墳を全部破壊するという考えを私は持っていない」と指摘した。その上で「工夫して(道路整備と)何とか両立できないか。関係者は保存か破壊かという対立を克服しようと努力している」と語った。

 具体的には、できるだけ古墳を残すため、片側2車線の道路を一部1車線化して整備する方法を挙げた。付近に古墳のレプリカを備えた公園を整備することも提案した。

 これに関連し、県街路整備課の小沢伸行課長は「古墳の上に歩道を回す方法を沼津市に助言した」と説明。「沼津市の考えを尊重した中で、できる範囲で助言や指導をしたい」と述べた。沼津市は市議会6月定例会に古墳の発掘調査費5100万円を盛り込んだ一般会計補正予算案を提出。一約2年間をかけて墳丘全体を削り取る発掘調査を行った後、道路整備に着手する考えを示している。

【静新平成27626()朝刊】

高尾山古墳に重要な学術的価値:沼朝記事

2015年06月26日04時20分59秒0001高尾山古墳に重要な学術的価値

 県考古学会も保存求める声明文

 静岡県考古学会は二十一日、静岡市で開かれた総会で「沼津市高尾山古墳の保存を求める声明」を決議。二十三日に植松章八会長ら役員三人が沼津市役所を訪れて市長部局と市教委に声明文を提出した。声明文は文化庁と県、県教委にも送付された。

 声明文では、高尾山古墳を「日本列島でも最古段階の大型古墳」「(東日本では)国指定史跡長野県弘法山古墳と双壁をなす最重要古墳」と位置付け、古代社会における中央と地方の関係を考える上で重要な学術的価値を有しており、「歴中的文化遺産としての価値が極めて高い」「静岡県民のみならず日本国民にとってかけがえのない貴重な文化遺産」としている。その上で古墳の「適切」な保存と活用を求めている。

 役員三人は市議会の合同審査会も傍聴した。

 審査会で出た「貴重な古墳だからこそ、解体して調査すべき」という主張に対し、同学会委員の篠原和大・静岡大教授は「ずれた議論だと思う。文化財保護法の理念が伝わっていない。文化財が失われることは、その価値も失われるということ。文化財を未来に残すことは文化の向上や発展への基礎になる。科学技術が日進月歩で進化する中、調査技術も発達している。将来の新技術による。調査の対象とするためにも、古墳を残す意義はある」と話す。

 植松会長は「今までの調査によって得られた価値と比べると、これからの調査によって得られるであろう価値は際立ったものになるとは思えない。古墳を残すこと犠牲にしてまでの価値ある知見が得られるとは思わない」と述べた。同学会は県内の専門家や文化保護関係者など約二百二十人が会員となっている。二〇一二年にも同古墳の保存を求める要望書を提出していて、沼津市教委からは「関係各所と協議していく」などとする回答が寄せられたという。

【平成27626()号】

高尾山古墳保存陳情で連合審査:市議会文消委と建水委で大別3つの意見

2015年06月26日04時18分13秒0001高尾山古墳保存陳情で連合審査

 市議会文消委と建水委で大別3つの意見

 高尾山古墳(東熊堂)の保存を要望する市民グループからの陳情害を対象にした市議会文教消防委員会(梶泰久委員長)と建設水道委員会(水口淳委員長)による連合審査会が二十三日に開かれた。両委員会所属議員十四人が出席し、梶委員長が議事の進行役を務めた。

 高尾山古墳を巡っては、都市計画道路沼津南一色線建設のために古墳解体を伴う調査を実施する予算案が二十四日の一般会計予算決算委員会で可決されている。

 今回の陳情書は、金岡地区の住民有志らによる「高尾山古墳を守る市民の会」、考古学専門家らで構成される「高尾山古墳を考える会」、インターネット上での署名活動などを展開する「高尾山古墳の保存を望む会」の三団体によって今月十六日に提出されていた。

 三団体は、三世紀前半に築造された東日本最古級である高尾山古墳の価値を重視し、現状を保ったままでの古墳保存を要望している。

 審査会で発言した委員の意見は、主に三つに分けられる。①陳情以前に市側に提出された門池地区岡宮自治会や金岡地区五自治会による道路整備推進の要望書を重視するもの。②古墳の価値や古墳解体方針などへの市民の理解が深まっていないので解体調査実施の決定を急ぐべきではないとするもの。③高尾山古墳は学術的に非常に貴重な古墳であるからこそ解体調査を行うべきというもの。

 道路重視 ①の立場の加藤元章委員(所属委員会・建水委、志政会)は、連合審査会の場に配布されていなかった自治会要望害の提出と内容説明を求めた。

 市側は要望書の内容について、東熊堂では道路建設用地確保のために宅

地移転などで協力していること、付近では交通事故が多発していて道路改良が必要であること、渋滞発生のため排気ガスなどで生活環境が悪化していること、などの点から道路の建設推進が要望されていることを説明した。

 続いて加藤委員は、沼津南一色線の建設中断によって生じている学園通りの渋滞問題を指摘。建設終了後の共栄町交差点(学園通りと国道一号の交差点)の交通量の変化予測について質問した。

 道路建設課の後藤久課長は、平成二十一年度交通量調査による二万台という数字を挙げ、建設により半減する、との見通しを述べた。

 また、加藤委員は古墳に観光的価値があるのかを尋ねた。

 市教委文化財センターの池谷信之主幹は、長野県の森将軍塚古墳(四世紀築造)が同県内指折りの観光地になっていることなどを挙げ、整備次第であるとした。

 古墳重視 ②の立場の殿岡修委員(建水委、未来の風)と梅沢弘委員(文消委、無所属)は、今回の陳情書のみならず、日本考古学協会による古墳保存要望の会長声明も重視。また、古墳解体方針が市民に知らされていない状態で解体調査予算案提出が行われたことから、古墳についての結論を現時点で出すのは尚早ではないかと意見を述べた。

 これに対し井原正利教育次長は、予算案の提出は様々な検討を経た結果だと説明。

 また、殿岡委員は、道路設計上の理由で沼津南一色線と高尾山古墳保存の両立は不可能であるとする市側の見解に疑問を呈し、現行の計画では時速六〇㌔用の道路となっているのを、低速用の道路に設計変更すれば技術的問題はクリアできるのではないかと指摘し、交通安全上の理由からも道路の低速化が望ましいと述べた。

 これに対して後藤課長は、速度変更を検討対象にはできない、と答えた。

 梅沢委員は有識者を交えた公聴会などによる審議を経たうえで古墳問題の結論を出すべきだとし、古墳調査予算案の取り下げか執行凍結を求めたが、梶委員長は「会計は審査会の所管外」として、この場において梅沢委員の主張は正当ではないとの判断を下した。

 調査重視 ③の立場で意見を述べたのは、渡部一二実委員(市民クラブ)、城内務委員(公明党)、頼重秀一委員(志政会)の三人で、いずれも文消委所属。

 この立場からは、古墳を現状のまま保存しても考古学の研究には貢献しないので、古墳を解体しながらの調査を進めることによって貴重な調査結果を得るべきだと主張。

 解体調査について得られる成果について質問を受けた池谷主幹は、高尾山古墳のような初期古墳が解体調査を受けた例は非常に少ないこと、古墳を解体することで古墳の建築技法に関する調査が可能になることなどを説明した。

 これらの主張の中で城内委員は、古墳が発見されてから現在までには十分な時間があったとし、今回の陳情書を出した人達がこれまでに市側へ保存を要望してこなかった点について疑問を呈した。その一方で、市側が予定している解体調査の方法やスケジュールを市民に周知することの重要

性も述べた。

 事実関係整理三つの立場からの意見とは別に川口三男委員(建水委、共産党市議団)は、市の方針に対する文化庁の対応について質問した。

 井原教育次長は、文化庁とは協議をしていたことを話し、解体調査の実施については文化庁の了承を得ている、とした。また、川口委員は古墳問題に対する栗原裕康市長の発言について質問。道路建設を進めると言う一方で、「やみくもに道路建設を強行するものではない」ともしている曖昧(あいまい)な言動の真意を確認した。

 審査会には市長は出席していないので、藤岡啓太郎副市長が代わりに答弁し、「関係機関と綿密に調整を行う」とする市長の立場を説明した。

 結論 市議会居への陳情は、請願と異なり何らかの議決を求めるものではないため、合同審査会でも陳情趣旨を市議会として受け入れることに対する採決は行われ中なかった。議事の進行役を務めた梶委員長は「陳情書を貴重な意見として受け止めてほしい」との意見を市当局に伝えて審査会は終了した。

【沼朝平成27626()号】

 

 古墳の認識深める議論なかった

 「高尾山古墳を守る市民の会」杉山治孝代表

 連合審査会を傍聴した「高尾山古墳を守る市民の会」の杉山治孝代表は、審査会の感想について「陳情書を、こうした形で取り上げていただいたことに感謝している。しかし、高尾山古墳の価値についての議論が深まらなかったのは、少々残念。沼津市が文化をどう扱うのか、沼津をどのようなまちにしていきたいのか、といった大きな視点での議論も期待していたが、『道路か古墳か』という話になりがちだった印象もある。私達は『古墳を残してほしい』と言っているのであって、『道路を造るな』とは言っていない。また、古墳保存を要望することが悪いことだと言いたいような意見も見受けられたが、郷土の文化や歴史を守ろうと主張することは、果たして悪いことなのだろうか」と話した。

【沼朝平成27626()号】

高尾山古墳関連6月24日新聞記事

高尾山古墳保存求める

 沼津市長らに県考古学会
2015年06月24日09時37分33秒0001 

 県考古学会(植松章八会長)23日、沼津市の都市計画道路「沼津南一色線」の建設予定地にあり、同市が墳丘などを取り壊す方針を固めた「高尾山古墳」(同市東熊堂)の保存を求める声明文を栗原裕康市長と工藤達朗市教育長に提出した。植松会長ら3人が市役所に届けた。

 声明は21日に静岡市内で開いた総会で、全会一致で議決した。3世紀前半の築造時期や中国産の出土品などから、国指定史跡の弘法山古墳(長野県)と双壁をなす最重要古墳と指摘し、「日本国民にとってかけがえのない貴重な文化遺産」として現況のまま保存活用することを求めた。

 学術関係者ら約220人の同学会が声明を出すのは異例。約25年前、二の谷中世墳墓遺跡」(磐田市)の保存を求めて同市や県に提出して以来という。

 沼津市は今後、墳丘の発掘調査を行う予定。植松会長は「古墳を後世に残すことを犠牲にするほどの成果は出ないのでは」と疑義を呈した。

 声明文は川勝平太知事や青柳正規文化庁長官、木苗直秀県教育長にも送られた。


【静新平成
27624()朝刊】
 
 市民グループの陳情受け審査会 沼津市議会

 沼津市の都市計画道路の予定地にあり、市が取り壊しを決めた「高尾山古墳」(同市東熊堂)の存続を求めて市内3市民グループが市議会議長に陳情したことを受けて、市議会文教消防、建設水道の両委員会の連合審査会が23日開かれ、市担当者から発掘の経緯や道路の建設状況の説明を受けた。

 委員からは道路建設による周辺の渋滞解消の効果や具体的な発掘手法などについての質問、市民に周知するための勉強会開催の提案が出た。文教消防委員会の梶泰久委員長は「古墳を大切な財産と認識し、活用法、保存法をさらに検討する必要がある」と市側に求めた。

【静新平成27624()朝刊】

 

 

市議15人が高尾山古墳視察
2015年06月24日09時37分33秒0003 

道路、文化財担当職員から説明受ける

 市議による高尾山古墳の現地視察が二十二日午後に行われ、文教消防委員会と建設水道委員会に所属する議員十四人のうち、体調不良の一人を除く十三人と正副議長が参加した。

古墳墳丘部の頂上に立った視察団は、はじめに道路建設課の後藤久課長から都市計画道路沼津南一色線の建設計画概要について説明を受けた。

 後藤課長は、道路と新幹線高架が交差できる場所は、高架の構造から見て現在の計画ルート以外にあり得ないこと、道路開通に必要な松沢川以東の区間(*)は岡宮北土地区画整理事業で工事に取り組まれることなどを話した。

 また、後藤課長は、視察準備のために移動中、道路建設課関係者の車両が渋滞に巻き込まれたことも強調し、道路建設の重要性を訴えた。

 市教委からは文化財センターの池谷信之主幹が古墳発掘調査の経緯と古墳築造年代について説明する一方、建設工事を前に行われる予定の発掘調査は、古墳表面の土を少しずつ剥がしながら行うため、最終的には古墳は姿を消すことになることなどを話した。

 説明の後、視察一行は古墳頂上部を自由見学しながら雑談。あるベテラン議員は「こんなもの早くつぶせ」と語り、これに対して別の議員が「このままでは貴重な古墳を壊した男として歴史に汚名が残るが、それでいいのか」と詰め寄る場面が見られた。

 また、他所では、ある議員が別の議員に対して「あなたは古墳が大事だと言うが、普段から古墳に関心を持っていたのか。これまでに見学したことのある古墳の名を今すぐ言ってみなさい」と迫るなど、古墳に対する理解を巡って様々な人間模様が演じられた。

 文教消防委員会の梶泰久委員長は視察後の感想として、「古墳が貴重なものであるとは感じている。しかし、道路計画は以前からあったものであり、いずれを重視するのか議論していきたい。古墳保存のあり方についても、様々な角度から考えたい」と話した。

 (*)松沢川以東の区間

 高尾山古墳一帯を含む以西区間が道路建設課の担当であるのに対し、以東区間は市の岡宮北区画整理事務所が担当。

 以東区間の工事は未着手だが、以西区間と合わせて平成三十三年度末までの開通を目指している。

【沼朝平成27624()号】

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