高尾山古墳(沼津)類似例各地に
遺構とインフラどう両立
都市計画道路建設に伴う墳丘取り壊しの是非が議論を呼ぶ沼津市の高尾山古墳に、類似事例のある県外自治体の文化財関係者が関心を寄せている。高尾山古墳と同様、遺構とインフラの両立が難航するケースは少なくない。
宮城県栗原市の「入の沢遺跡」は工事中の国道バイパスの北端にある古墳時代前期の大規模集落跡。日本考古学協会が7月、「大和政権と北方世界の関係性を考える上で、極めて重要」として保存を求める要望書を出した。工事継続の可否を国土交通省、県、市が協議している。
宮城県文化財保護課の担当者は「各地に高尾山古墳のような事例がある」と指摘する。「報道などで世の中に広く知られることで、全国から知見が集まる」と期待も込める。
遺構を残すために道路と河川堤防の計画を変えたのが岩手県平泉町の柳之御所遺跡。1988年以後の発掘調査の結果、12世紀の奥州藤原氏の政務拠点だったことが判明した。北上川の堤防と国道バイパスの建設予定地だったが、93年に計画変更し、川、堤防、道路を東に移した。
岩手県平泉遺跡群調査事務所の担当者は「保存を求める20万人の署名が集まった。行政と住民が対話を続けたことで遺跡保全と水害対策の両立策が生まれた」と振り返る。
長野県松本市の弘法山古墳は高尾山古墳と同時期の3世紀前半に造られた前方後方墳。市内を一望する標高650㍍の弘法山頂上に位置する。全長60㍍超で、高尾山古墳と並び東日本最古とされる。
発掘調査後の76年、国の史跡指定を受けた。山裾に桜の木が数千本植えられ、春は花見客が集う。松本市教委文化財課の担当者は「原形保存を求める市民の声が市を動かした。JR松本駅から約2㌔という立地も史跡公園として整備する上で幸いだった」と話した上で、「良い形で残す方法が見つかればいいが」と高尾山古墳を案じた。
*高尾山古墳 全長約62㍍、高さ約5㍍(推定)の前方後方墳。2008年以後の沼津市教委の発掘調査で、3世紀前半の古墳としては弘法山古墳(長野県松本市)と並び、東日本最大規模であることが判明した。
【静新平成27年7月27日(月)朝刊】