解体調査も依然、選択肢に
高尾山古墳で市長が考え
二十六日に開かれた定例記者会見で栗原裕康市長は、今月六日の臨時記者会見で高尾山古墳の解体調査方針を「白紙撤回する」と表現したことについて、「(調査予算を認めた)議会の議決を留保したことの延長に過ぎない」と改めて説明。解体調査を行う従来の方針は最終的な選択肢の一つとして残されている、との見解を示した。
従来の方針は、古墳表面の土を剥ぎ取りながら古墳の内部構造などを明らかにする調査を行い、調査により消滅した古墳跡地に都市計画道路沼津南一色線の車道を整備するというもの。古墳を囲む空堀である周溝の一部は埋め立て保存され、その上に歩道が整備される。中心部分を含む古墳の大半は失われるが、古墳のごく一部でも地中に残ることにより、古墳の正確な位置を後世に伝えられる意義がある。
今回の会見で栗原市長は、解体調査方針について「古墳の学術的な価値を別の場所に保存する方法」だと表現し、「調査により古墳を壊すことは学術的価値を損なうものではない」との考え方を示した。その一方で、「古墳を現状保存すべきという声も出てきているので、これからは現状保存の是非も含めて協議することになる」と述べた。
また栗原市長は、協議後に最終的な結論を出す際の選択肢についても語り、選択肢から除外される事柄として「道路建設を断念する」「古墳をブルドーザーで壊して道路を建設する」の二点を挙げたが、表土の剥ぎ取り調査によって古墳を解体し道路を整備するという選択肢については、依然として有効であるとの考えを見せた。
保存など扱う協議会を開催
9月3日に第1回、一般傍聴も受け付け
高尾山古墳の保存問題を扱う協議会(*)の第1回が、九月三日午前十時十分から十一時四十分までプラサヴェルデ四階の会議室で開かれる。一般の傍聴も可能で、当日の十時まで会場前で受け付けを行う。
協議会では、都市計画や文化財保存などの専門家が委員として出席し、「高尾山古墳保存と沼津南一色線整備の両立を図るために、実現可能性のある選択肢を検討する」とされているが、古墳保存と道路整備のあり方の最終的な決定は栗原裕康市長によって行われ、協議会に決定権はない。協議会が道路整備案などの具体案を提示することもないという。
この協議会は、古墳解体調査費を含む補正予算案が六月三十日に市議会で可決された直後、市長が報道関係者からの取材を受ける中で開催を表明していた。
八月六日には臨時記者会見が開かれ、協議会の位置付けや内容について藤岡啓太郎副市長から説明が行われた。この席上、報道関係者からの質問に答える形で栗原市長が従来の方針の「白紙撤回」発言を行っている。
協議会を構成する五人の委員と二人のアドバイザーの顔触れは次の通り
(敬称略)。
委員▽大橋洋一=学習院大学法科大学院法務研究科長。専門は行政法と都市計画。
▽久保田尚=埼玉大学大学院理工学研究科教授。専門は都市計画。
▽矢野和之=文化財保存計画協会代表取締役、日本イコモス国内委員会事務局長。専門は文化財保存計画。
▽難波喬司=静岡県副知事、京都大学客員教授。
▽杉山行由=県教委教育次長。
アドバイザー
▽神田昌幸=国土交通省街路交通施設課長。
▽禰宜田佳男=文化庁記念物課主任文財調査官。
(*)正式名称は「高尾山古墳保存と都市計画道路(沼津南一色線)整備の両立に関する協議会」。公式の略称はない。
【沼朝平成27年8月27日(木)号】