「あの築山」は危険がいっぱい
河辺龍二郎
沼津市は、千本常盤町の「あの築山」造成工事に十月初めに着工しました。私ども沼津牧水会理事会は、この時点で着工することに、全会一致で強く反対しました。松の木の存続もさることながら、計画変更の紆余曲折の中で、「あの築山」が、以下に述べるような危険なものになってしまうことを危惧したためでもあります。危険を承知の上で、あえて強行する沼津市の姿勢に、「あの築山」自身の危険以上の「危うさ」を感じるのは、私だけでしょうか。
1、芝貼表土流出の危険…三〇度を超える急斜面が多く、表土の厚さはわずか三〇㌢。しかも地山(じやま)はセメント系の強化剤混入により不透水層になると思われるので、雨水による流出は必至である。
2、仮設土嚢崩落の危険…今春根回しをした三本の松(「孤高の松」と「夫婦の松」)の発根状況を確認するまでの間(約三年)、その周囲に、土嚢が六㍍の高さまで、七〇度近くで積み上げられることになっている。地山は地盤強化剤により、ある程度固形化すると思われるが、ビニール製の土嚢は地山に寄りかかっているだけで、一体化はされない。ちょっとした地震でも揺すぶられれば、土嚢がばらばらに崩落する危険性がある。
3、「孤高の松」の移植もしくは移植調査作業時、土嚢下の掘削による土嚢崩落の危険…この場合は、作業者の人身事故につながるおそれがある。
4、地山本体の接地面での境界面すべりによる崩壊の危険…地山本体は固形化するとしても、元の細砂地盤との摩擦係数は大きなものとは思えない。地中に埋め構造物とは異なり、地表に置かれただけなので、拘束される条件はない。巨大地震の大きな水平力が加わった時、一旦動けば、摩擦係数は、さらに小さくなり、大崩壊につながりかねない。
5、細砂地盤の液状化の危険…沼津市の現在のハザードマップでは、液状化の危険度は「ない」及び「対象外」と表示されているが、静岡県の詳細資料(*)によれば、危険度「大」と指摘されている。
平成十三年度、沼津市発行の旧マップでも、県資料と同じく危険度「大」になっているので、現マップの意味するところは、「ない」ではなく「対象外」と推測できる。となれば、計画の前提は、当然危険度「大」であるべきであろう。この点について、計画の根幹にかかわることであり、大いに考慮されてしかるべきである。(*GIS静岡県統合墓盤地理情報システムを参照)
6、子ども達にとって危険な遊び場所となる…子ども達は危険な場所が好きである。命にかかわるような大けがをしてからでは遅い。
7、松が枯死する危険…「孤高の松」をはじめ多くの松が、「あの築山」によつて、根方を圧迫されることになり、徐々に活力を奪われ、枯死するおそれがある。
多くの市民は、適切な対応が取られて、これらの危険がすべて杞憂に終わってくれることを願っていると思います。しかし、この危険の中には、何十年、何百年に一度起こるかどうかというものも含まれています。このまま進行すれば、誰もが安堵の胸を撫で下ろすことなど、できないでしょう。すぐには起こるかどうかわからない危険に対処するのが、「危機管理課」の使命であろうことを考えると、ことさら危険を生み出しているかに見える「あの築山」、の築造は、実に罪が深いと言わざるを得ません。
(群建築研究所沼津代表・沼津牧水会理事)
【沼朝平成27年10月30日(金)言いたいほうだい】