2020年06月
大型評論
ジャック・アタリ氏 フランスの思想家
新型コロナゥイルス感染症とその死者の先に、さらには感染症が引き起こす、過小評価してはならない経済社会の甚大な破局を乗り越えたその先に、六つの重大な転換が起こるだろう。それらは、私たちの「気付き」の結果として出現する。
たとえ感染症が魔法のように早々と消え去ったとしても、これらの転換は起こる。転換はうまく制御すれば、素晴らしく前向きで、見事な変化をもたらし得るだろう。人類最良の時に向かっていく可能性もある。
①距離
人々はリモートワークの可能性に気付いた。これは在宅勤務を促していくことになろう。もはや、会社に近い大都市に住む必要はなくなる。より遠くに住むことが可能となろう。人々はより多くの時間を田舎や小さな町に住み、働くことで過ごす。都市計画は建物の間がよりゆったりしたものに向かい、大都市の不動産の価値は、商業地であれ住宅地であれ下落するだろう。
確かに通勤の機会が少なく、あるいはほとんどなくなれば、従業員の会社への帰属意識が弱まるリスクはある。
これを維持しようとするなら、企業は社屋という場所に代えて、帰属を感じる別の根拠を示す必要がある。それは、株主の企図とは無関係なプロジェクトになろう。想定し得るのは、例えば自分たちは環境を汚染しないという計画や、会社で働く者の生活水準の改善、従業員の能力向上といったプロジェクトだ。
②生き方
人々は、人生がいかに短いか、あらゆるくだらない物事よりもどれほど重要かということを自覚した。自分がしていること、買うもの、欲しいものの多くがおそらくは無用だと理解した。
季節ごとに服を新調する必要はあるのか。2~3年でマイカーを替える必要はあるのか。最新のビデオゲームを入手しようと躍起になるのはどうか。つまり「命を守る経済」と称される分野以外で、物事に執着するのはやめたほうがいいと気付いた。
「命を守る経済」とは、健康や保健衛生であり、食料や地産地消の農業、教育、研究、国土整備、デジタル、治安、流通、クリーンエネルギー、物流、メディア、そして民主主義に資する諸手段のことだ。
もし各企業、各国政府がこの重要性を理解すれば、生産設備をこうした経済分野、雇用や経済成長、環境にとって素晴らしい分野に振り向けようと全力を尽くすだろう。それは、自動車や航空、観光業界など困難に陥っている経済分野の転換にも道筋を付けるものとなろう。
③普遍的利益
私たちは、株主のいない、利潤を目的としない「社会的経済」の重要性に気付いた。
人々は、そうした非営利団体(NPO)の活動があらゆる領域で拡大し、今日では主要国において国内総生産(GDP)の10%超を占め、GDP以上の速さで成長していることを理解した。
これらの団体は未来の非常に重要な一部を形成する。将来「命を守る経済」の一層重要な部分が、こうした団体や資本だけに左右されない新ジャンルの企業群によって担われると、私たちは期待してもいい。そこでは利他主義、他者を喜ばせることの喜びが、行動を動機付ける源泉となろう。
④透明性
人々は多方面にわたる透明性の必要を自覚した。だが、これは独裁の道具にも民主主義の道具にもなり得るものだ。
中国当局が感染症を管理した方法、つまり国民や世界に真実を隠すというやり方は、危機を深刻化させた。もし完全な情報公開が原則であったなら、感染症は世界的にずっと軽微な影響で済んだはずだ。私たちは事態を未然に防げただろう。
私たちは今日、何よりも感染者すべてを突き止めて彼らを隔離するために、透明性が必要であることを知っている。
これは、さらに全面化するだろう。人々は自分自身や、自らの利益のために、すべてを知りたいと思うだろう。自分にとって有益、もしくは有害となり得る他者についても、すべてを知りたいと思うだろう。
学校の先生は生徒が考えていることのすべてを知りたいと思う。(退屈しているか?集中しているか?勉強しているか?やる気はあるか?)。警察官は犯罪者が考えていることのすべてを知りたいと思う。(うそをついていないか?)
公権力であれ民間の権力であれ、市民を操る目的で、その全データを独占すれば、透明性は独裁の道具となろう。これは本当に危険だ。独裁者は、透明性こそが治安維持の要件だと説明するだろうからだ。
一方で、私たちそれぞれが自分の個人情報の所有者であり続け、民主的に選ばれた権力が説明・定義した限定的データだけを共有することにすれば、透明性は民主主義の手段となるだろう。
⑤未来に備える
人々は、将来の脅威に対して素早く行動を起こすことの重要性に気付いた。従って、次の脅威には、今回以上に準備して、素早く対処しなければならない。
この感染症の第2波、あるいは蚊が媒介する新たな感染症の到来、地球温暖化、生物多様性の消滅、その他の脅威に備え、早速計画を練る必要がある。
これは素晴らしいことだ。韓国人が今回の感染症に備えていたように、自分たちが次の感染症に準備できれば、世界は数十万人の犠牲者や数億人の失業、数兆ユーローに上る経済損失を回避できるかもしれない。私たちはあらゆる戦略を用いてあらかじめ敵を知り、戦いを優位に進められよう。
そして、ここでもまた脅威を回避するために人々がとるべき最良の方策は「命を守る経済」を発展させることなのだ。
⑥世界の一体性
私たちは、誰もが相互に依存していることを自覚した。世界のどこかで発生したささいな出来事が、他のあらゆる場所に甚大な結果をもたらし得ると気付いた。
他の人々が健康で幸福であれば、私たちにも利益となる。他の人々が最良の法規範を施行すれば、私たちにも利益であり、私たちを守ることにつながる。それは市場のグローバル化よりずっと有益な、道理や正義の民主的グローバル化の始まりとなる可能性がある。
◇
もし、私たちがこれら六つの変化を民主的に実現できるなら、この危機はネガティブな側面だけではなくなるだろう。危機は、私たちの文明を救済し得る、大いなる方向転換の機会にすらなるだろう。
【静新令和2年6月17日(水)朝刊】
paipudes
- あさぎり号
- あとの祭り会議
- あまねガード冠水
- お会式
- みのりフーズ
- みゆきばし
- よさこい東海道
- わたやす
- アベノマスク
- イルカ追い込み漁
- オリンピック
- カッパ祭り
- コロナワクチン
- コンパクトシティー
- スルガ銀
- スルガ銀不正融資
- 一貫校化
- 上皇后さま乳がん治療
- 中学2校は一中へ
- 事業レビュー
- 令和
- 佐渡
- 保阪正康
- 公開講座
- 冠水被害
- 危険ブロック壁
- 台風19号
- 命山
- 城岡神社
- 大沼明穂
- 大沼明穂市長
- 大統領選挙
- 妙海寺
- 学校統合問題
- 安野光雅
- 小中学校の統合
- 小学3校は一小
- 小川良昭
- 小野光倫
- 市長選
- 平成
- 広島
- 思想家
- 懲罰動議
- 戦後昭和史
- 支援ロボット使った手術
- 新幹線放火
- 旭化成建材
- 東海大開発工学部跡
- 校区統合問題
- 梅干し
- 横領
- 歴民
- 死に方の質
- 沼津の第一第二中区統合
- 沼津・三島の昭和
- 沼津上本通り商店街
- 沼津兵学校附属小学校
- 沼津商業界戦後昭和史
- 沼津富士急百貨店
- 沼津市教育委員会
- 沼津市立第一小学校
- 沼津市議会
- 沼津市長選
- 沼津第一
- 沼津観光協会
- 瀬川裕市郞
- 父の日
- 牧水祭
- 狩野川台風
- 狩野川灯ろう流し
- 独り言
- 玉樹
- 県立美術館
- 第1回沼津市新型コロナウイルス感染症経済対策連絡会
- 第一・第二校区の学校統合
- 第一・第二校区の統合問題
- 第二中の校区再編
- 第二中学校区意識調査
- 築山
- 絵画展
- 美術展
- 聖火リレールート静岡県
- 薬王山寺報
- 蛇松線
- 街
- 訃報
- 賀状
- 赤のれん
- 辻畑古墳
- 長倉三郎氏
- 長浜城
- 開花
- 防災
- 陶芸展
- 静岡県鉄道発祥の地
- 駿豆電気鉄道
- 高尾山古墳
- 高峯副市長を懲戒処分
- 高齢者社会