研究・論文

物理化学者故長倉氏の意志継ぎ 母校沼津東高に遺産寄付

2021年08月31日13時01分23秒0001


物理化学者故長倉氏の意志継ぎ

母校沼津東高に遺産寄付

書籍や論文 図書館で特設展示

物理化学者で日本学士院長を務めた故長倉三郎氏(19202020)の遺族が30日、長倉氏の母校である沼津市の沼津東高を訪れ、遺産の一部の2千万円を寄付した。資料やアルバムなども寄贈し、同校は図書館に特設コーナーを設置するという。

同校で贈呈式が行われ、おいの西島健介さん(69)と相続人代表の長倉正彦さん(73)の親族2人が出席した。寄付金の目録とともに、長倉氏が同校で講演した際のメモや中高生代のアルバム、籍、論文などの資料を手渡した。

今回の寄付と寄贈は長倉氏の遺志に基づくという。西島さんは「(長倉氏は)中高時代に進路を決め、研究の礎を築いた。若い人に業績を伝えられたら」と話した。同校の卒業生でつくる香陵同窓会の小野毅会長は、校内にある長倉氏の石碑について触れながら、「大変な宝をいただいた。碑に刻まれた『二十一世紀は若人の知的創造に期待する時代』を体現する人材の輩出につなげたい」と述べた。

同校は今後、同窓会PTAなどを交えて付金の使い道を検討するとしている。

(東部総局・菊地真生)

学術会議の任命拒否問題 小川良昭

時評 小川良昭

 学術会議の任命拒否問題

 裁量権逸脱かを判断

 2020年12月16日04時36分05秒0001このところ、日本学術会議の会員候補者の任命拒否問題が議論されています。

 日本学術会議は、1949年に「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与すること」を使命として設立されました。

 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄の下に、政府から独立して職務を行う特別な機関で、非常勤の特別国家公務員である210人の会員によって組織され、ほかにも約2千人の連携会員がいます。運営費は、総額約500億円を要したというアベノマスクに比べ、国費である日本学術会議の予算は、わずか約10億円ですが、うち約4割が約50人の職員の事務経費で、実際にさまざまな職務にあたる会員の活動経費はなかなかに窮屈なようです。

 今回、6人の会員候補者の任命が拒否されましたが、日本学術会議法では「日本学術会議は、優れた研究又は業績がある科学者を選考し、会員候補者として内閣総理大臣に推薦し、同大臣が任命する」とされています。

 そこで問題となるのは、内閣総理大臣の任命権の内容です。任命拒否理由について、これまで菅義偉総理大臣は、「総合的・俯瞰(ふかん)的な観点」「多様性の確保」「個別の人事」「国民・国会への責任」などを拒否理由にしているものの、残念ながら具体的な拒否理由は説明していません。

 ところで、行政行為では、時として、行政機関の裁量権の逸脱が問題となりますが、裁量は無制限ではなく、その行政行為について定める法律の制度や趣旨に照らして裁量の逸脱の有無を検討します。今回の任命拒否行為も行政行為ですから、法律的には、日本学術会議法の制度や趣旨に照らして拒否行為が裁量権の範囲を逸脱しているか否かを判断することが必要です。 その観点からしますと、任命拒否理由については、明確な理由が明らかになることが必要と思います。メディアによると、多くの国民が拒否理由を知りたいと報道されていますが、一法律家の私もその理由を知りたいものです。

 最後に一言です。今回の任命拒否を契機に、日本学術会議の在り方そのものも議論されるようになりました。しかし、日本学術会議の在り方の問題と、会員候補者の任命の問題とは全く異なるものであると思います。その在り方については、今後、日本学術会議法の制度や趣旨とともに、科学や学術の意味をも熟慮検討するなどして議論が深まることが望まれます。(弁護士)

 

☆ おがわ・よしあき 県弁護士会沼津支部所属。19449月、沼津市生まれ。沼津東高、京都大法学部卒。裁判官を経て弁護士に転身。日弁連常務理事、県弁護士会会長を歴任。元沼津市選挙管理委員会委員長、元法テラス沼津支部長。現在、県人事委員会委員長。

【静新令和2年12月16日(水)朝刊「時評」】

権力の問答無用常態化 保阪正康

現論 保阪正康

ほさか・まさやす 1939年札幌市生まれ。同志社大卒。「昭和史を語り継ぐ会」を主宰。昭和史の実証的研究を独自の視点で続ける。2004年に菊池寛賞。著書に「昭和陸軍の研究(上下)」「昭和天皇実録その表と裏」「ナショナリズムの昭和」(和辻哲郎文化賞)など。

 2020年12月13日03時44分30秒0001

権力の問答無用常態化

 日本学術会議の会員候補6人が任命拒否にあったという「事件」は、その後国会でも論じられているが、政府答弁はその理由をいまだ明らかにしていない。なぜだろうか。答えは簡単ではないか。つまり政府にとって目障りだからである。反政府的な声明の呼び掛け人であったり、その傾向が強かったりするからということであろう。

 こうした処置(権力を使った制裁ということになる)について、私は本質を見抜かなければならないと思う。拒否を取り消せとか、学術会議の体質を変えろとか、極めて近視眼的な論議があるが、表面を糊塗(こと)するにすぎない。もっと歴史的な視点が必要ではないか。

 私は既にこれは新しい形のパージ(追放)ではないかといった見方を示してきたが、さらに踏み込むと、もっと重要な意味があるように思う。

 監獄か面従腹背か 

 昭和ファシズムは、軍事があらゆる思想、哲学、制度を解体することで極めて分かりやすい形の国家体制をつくった。それは結果的に戦争に即応する便利な体制だつたのである。この体制の基本形は「正方形」である。一辺が情報管理(言論・表現の自由制限)、「辺が国定教科書の軍事化(児童生徒の想像力抑圧)、一辺が暴力(テロや官憲による拷問など)、最後の一辺が弾圧立法の拡大解釈(当局の恣意(しい)的判断)という枠組みに囲われたら、多くの人は黙ってしまう、ファシズムの完成である。

 それでも抵抗する人はいる。大体が共同体から放逐され、生活手段を失う。昭和ファシズムに向き合った時、結局は監獄生活か、面従腹背か、亡命か、自殺かといった道しかなかった。昭和史の検証が必要だというのは、こうした事実を教訓化できるか否かが問われているからだ。

 この正方形理論で見ていくならば、現代は昭和型のファシズムではありえない。ファシズムの怖さは国家権力が暴力化することである。むろん肉体的な暴力だけではなく、社会的、心理的な意味での暴力も含めてのことである。不安、おびえ、そして恐怖の感情が培養され、それゆえに自らを時流に重ねて安堵(あんど)するのである。昭和ファシズムに抵抗した人がほとんどいなかったことは、このようなサイクルに入り込んでいたからだ。

 任命拒否の意味 

 さてこうした構図を見たうえで、今回の任命拒否はどのような意昧を持つのか。私は、政府は6人に対して極めて無礼だと思う。拒否の理由を説明しないことは、人間としての尊厳を傷つけているという一事に気が付いていない。 私が昭和ファシズムより悪質だと指摘するのは、このような「問答無用、切り捨て御免」が、権力の側から常態化しているからだ。社会的批判がもつと高まっていい。「答弁を控える」という菅義偉首相の雷は、何度も繰り返されているのだが、よく考えるとこの言は犯罪性を帯びているのでは、とすら雷いたくなる。少なくとも社会的常識から逸脱している。

 現在が昭和ファシズムと同じ構図だなどというつもりはない。正方形の各辺が露骨になってきて、私たちをこの枠組みの中に押し込めようとしているわけではない。だが6人の任命拒否は、目に見えない形で自由社会に反する空気が生まれていることを示す。一見、民主主義社会の形が機能しているかに見えて機能不全を起こしている。ファシズムとは言わないけれども、新しい形の管理社会が生まれつつあるのかもしれない。

 この管理社会は今、国民各層に広がつているアパシーシンドローム(無気力症候群)や命令受動型、異端者排除の人々によつて支えられているように、私には思える。

 こうした現象が、新型コロナウイルス禍とどう関係があるのかは分からない。ただ神経質と書われるかもしれないが、コロナ禍が生み出す社会的変調が従来の価値観を変えることは間違いない。任命拒否が示している問題は、コロナ禍が遠因になっていると後年分析されるかもしれない。

 昭和ファシズムは正方形の囲みの中に、国民を閉じ込めた。今私たちは新たな正方形の囲いの中に追い込まれようとしているのではないか。その一辺には政府の無責任答弁、もう一辺には問題から逃げる国民意識があると言ったら言い過ぎだろうか。

 (ノンフィクション作家)

【静新令和21213日朝刊「現論」】

世界文明の六つの転換「命を守る経済」に力を

大型評論

 ジャック・アタリ氏 フランスの思想家


2020年06月17日10時13分27秒0001世界文明の六つの転換「命を守る経済」に力を

 新型コロナゥイルス感染症とその死者の先に、さらには感染症が引き起こす、過小評価してはならない経済社会の甚大な破局を乗り越えたその先に、六つの重大な転換が起こるだろう。それらは、私たちの「気付き」の結果として出現する。

 たとえ感染症が魔法のように早々と消え去ったとしても、これらの転換は起こる。転換はうまく制御すれば、素晴らしく前向きで、見事な変化をもたらし得るだろう。人類最良の時に向かっていく可能性もある。

 ①距離

 人々はリモートワークの可能性に気付いた。これは在宅勤務を促していくことになろう。もはや、会社に近い大都市に住む必要はなくなる。より遠くに住むことが可能となろう。人々はより多くの時間を田舎や小さな町に住み、働くことで過ごす。都市計画は建物の間がよりゆったりしたものに向かい、大都市の不動産の価値は、商業地であれ住宅地であれ下落するだろう。

 確かに通勤の機会が少なく、あるいはほとんどなくなれば、従業員の会社への帰属意識が弱まるリスクはある。

 これを維持しようとするなら、企業は社屋という場所に代えて、帰属を感じる別の根拠を示す必要がある。それは、株主の企図とは無関係なプロジェクトになろう。想定し得るのは、例えば自分たちは環境を汚染しないという計画や、会社で働く者の生活水準の改善、従業員の能力向上といったプロジェクトだ。

 ②生き方

 人々は、人生がいかに短いか、あらゆるくだらない物事よりもどれほど重要かということを自覚した。自分がしていること、買うもの、欲しいものの多くがおそらくは無用だと理解した。

 季節ごとに服を新調する必要はあるのか。23年でマイカーを替える必要はあるのか。最新のビデオゲームを入手しようと躍起になるのはどうか。つまり「命を守る経済」と称される分野以外で、物事に執着するのはやめたほうがいいと気付いた。

 「命を守る経済」とは、健康や保健衛生であり、食料や地産地消の農業、教育、研究、国土整備、デジタル、治安、流通、クリーンエネルギー、物流、メディア、そして民主主義に資する諸手段のことだ。

 もし各企業、各国政府がこの重要性を理解すれば、生産設備をこうした経済分野、雇用や経済成長、環境にとって素晴らしい分野に振り向けようと全力を尽くすだろう。それは、自動車や航空、観光業界など困難に陥っている経済分野の転換にも道筋を付けるものとなろう。

 ③普遍的利益

 私たちは、株主のいない、利潤を目的としない「社会的経済」の重要性に気付いた。

 人々は、そうした非営利団体(NPO)の活動があらゆる領域で拡大し、今日では主要国において国内総生産(GDP)10%超を占め、GDP以上の速さで成長していることを理解した。

 これらの団体は未来の非常に重要な一部を形成する。将来「命を守る経済」の一層重要な部分が、こうした団体や資本だけに左右されない新ジャンルの企業群によって担われると、私たちは期待してもいい。そこでは利他主義、他者を喜ばせることの喜びが、行動を動機付ける源泉となろう。

 ④透明性

 人々は多方面にわたる透明性の必要を自覚した。だが、これは独裁の道具にも民主主義の道具にもなり得るものだ。

 中国当局が感染症を管理した方法、つまり国民や世界に真実を隠すというやり方は、危機を深刻化させた。もし完全な情報公開が原則であったなら、感染症は世界的にずっと軽微な影響で済んだはずだ。私たちは事態を未然に防げただろう。

 私たちは今日、何よりも感染者すべてを突き止めて彼らを隔離するために、透明性が必要であることを知っている。

 これは、さらに全面化するだろう。人々は自分自身や、自らの利益のために、すべてを知りたいと思うだろう。自分にとって有益、もしくは有害となり得る他者についても、すべてを知りたいと思うだろう。

 学校の先生は生徒が考えていることのすべてを知りたいと思う。(退屈しているか?集中しているか?勉強しているか?やる気はあるか?)。警察官は犯罪者が考えていることのすべてを知りたいと思う。(うそをついていないか?)

 公権力であれ民間の権力であれ、市民を操る目的で、その全データを独占すれば、透明性は独裁の道具となろう。これは本当に危険だ。独裁者は、透明性こそが治安維持の要件だと説明するだろうからだ。

 一方で、私たちそれぞれが自分の個人情報の所有者であり続け、民主的に選ばれた権力が説明・定義した限定的データだけを共有することにすれば、透明性は民主主義の手段となるだろう。

 ⑤未来に備える

 人々は、将来の脅威に対して素早く行動を起こすことの重要性に気付いた。従って、次の脅威には、今回以上に準備して、素早く対処しなければならない。

 この感染症の第2波、あるいは蚊が媒介する新たな感染症の到来、地球温暖化、生物多様性の消滅、その他の脅威に備え、早速計画を練る必要がある。

 これは素晴らしいことだ。韓国人が今回の感染症に備えていたように、自分たちが次の感染症に準備できれば、世界は数十万人の犠牲者や数億人の失業、数兆ユーローに上る経済損失を回避できるかもしれない。私たちはあらゆる戦略を用いてあらかじめ敵を知り、戦いを優位に進められよう。

 そして、ここでもまた脅威を回避するために人々がとるべき最良の方策は「命を守る経済」を発展させることなのだ。

 ⑥世界の一体性

 私たちは、誰もが相互に依存していることを自覚した。世界のどこかで発生したささいな出来事が、他のあらゆる場所に甚大な結果をもたらし得ると気付いた。

 他の人々が健康で幸福であれば、私たちにも利益となる。他の人々が最良の法規範を施行すれば、私たちにも利益であり、私たちを守ることにつながる。それは市場のグローバル化よりずっと有益な、道理や正義の民主的グローバル化の始まりとなる可能性がある。

 もし、私たちがこれら六つの変化を民主的に実現できるなら、この危機はネガティブな側面だけではなくなるだろう。危機は、私たちの文明を救済し得る、大いなる方向転換の機会にすらなるだろう。

【静新令和2617日(水)朝刊】

沼津まちなか歴史MAP(はなさき地図)平成30年3月31日発行

沼津まちなか歴史MAP(はなさき地図)平成30年3月31日発行
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2018年04月05日10時13分44秒0001kk
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