イルカ追い込み漁再開へ

いとう漁協 伝統漁法15年ぶり

水産庁と県に協力要請

食用から方針転換 飼育用に限定

2019年06月16日06時51分18秒0001 伝統漁法「イルカ追い込み漁」を継承するいとう漁協(伊東市)が、水族館などで展示・飼育するための「生体捕獲」に限定した上で本年度漁期(101日~来年331)にも漁を再開する方針を固めた。水産庁と県に協刀を要請している。15日、関係者への取材で分かつた。飼育用イルカの需要を見込み、これまでの食用捕獲から方針を転換し、伝統漁法の再開を図る心捕獲すれば15年ぶりとなる。=関連記事27面へ

 関係者によると、同漁協は同市における追い込み漁の基準どなる作業マニュアルの改定について、水産庁と県に協力を要請した。現行は食肉用の捕殺・解体の手順が中心だが、同漁協は水産庁、県と協議しながら生体捕獲に対応した内容に変更する。

 生体捕獲への方針変更は、残酷なイメージが強い食用捕獲より漁再開への批判が少ないという判断がある。また、タンパク源が少なかった時代と異なる現代で、食肉用より飼育用の方が需要が高いという目算もある。

 国内で追い込み漁を行うのは同市と和歌山県太地町の2カ所。いとう漁協には毎年、同庁からの捕獲枠が付与され、昨年はバンドウイルカ34頭、オキゴンドウ11頭などの捕獲が認められた。だが、2004年を最後に、捕獲数ゼロが続いている。

 追い込み漁によるイルカの生体捕獲は、世界動物園水族館協会の働き掛けを受け、日本協会が15年から会員施設に追い込み漁イルカの入手を禁止している。一方、繁殖による確保が難しいなどの理由で脱退する施設もあり、関係者によると、同漁協は昨年、県内外から10頭程度の注文を受けていたという。

 水産庁の幹部は取材に対し、「(マニュアル改定の)意向は聞いている。漁が行われるよう助言していく」と話した。県の担当者は協力要請の有無は明らかにしないものの、「具体的に操業の意思が示されれば環境整備を進める」としている。

(伊東支局・山本一真)

☆イル力追い込み漁明治時代から伊豆半島で営まれてきた伝統漁法。現在、県内ではいとう漁協(伊東市)だけが継承する。最盛期には年間1万頭超を捕獲した。前回捕獲のあった2004年以降は群れが遠方で条件が整わないことや、15年に伊豆半島ジオパークの世界ジオパーク認定が保留された理由の一つに追い込み漁が挙げられたことなどから行われていない。

イル力追い込み漁

「伝統継承へ第一歩」

伊東ジオ世界認定、転機に

 伊東市のいとう漁協が、「イルカ追い込み漁」の再開に向け、食用捕獲から生体捕獲に方針変更するマニュアル改定への協力を国と県に要請していることが15日、明らかになった。最後に捕獲のあった2004年から15年。漁そのものが存続の危機に直面する中、漁協関係者は「マニュアル改定は再開への第一歩。伝統漁法を継承したい」と話す。

 関係者によると、出漁条件が整わないことに加え、再開へのハードルになっていたのが、15年に伊豆半島ジオパークの世界ジオパーク認定が保留された理由の一つにイルカ漁が挙げられたことだった。同漁協は当時「先輩漁業者の努力や気概を否定された思い」などと反発したが、その後は世界認定に協力する形で「実質的な自粛状態だった」(漁協関係者)という。

 184月の世界認定の際に追い込み漁への言及がなかったことを受け同漁協は水面下で再開を模索。同年はジオパーク関係者と協議の上、記念行事などに配慮して取りやめたが、県内外の水族館から一定数の受注が見込のることから、本年度は早い段階から国や県に再開する意向を伝えていた。

【静新令和1616日(日)朝刊】