沼津・津波避難「築山」建設

市長、計画変更案示す

 牧水会理事長「納得できない」
2014年12月27日10時34分55秒0009
 

 沼津市の栗原裕康市長は26日、市が同市本で進める津波避難用の人工高台「築山」の建設に伴って千本松原の松を伐採する計画に対し、見直しを求めている沼津牧水会の林茂樹理事長ら役員6人と市役所で面会し、設計の変更案を示した。

 変更案は、築山の幅を狭めることで伐採本数をこれまでの約90本から24本に減らす。築山の周りに100本以上の松、1千本以上の照葉樹を植栽する。

 市危機管理課の担当者は「結果的に松の本数は切る前より増加する」と話す。今後は変更案を地元住民ら関係者に説明し、理解を求めながら計画を進める方針。

 一方、説明を受けた林理事長は「移植するなど1本も切らない方法を考えるまで納得できない」と述べ、これまでで約4千人分を集めた計画見直しを求める署名活動を続ける考えを示した。

 林理事長によると、1級建築士が建設予定地に隣接する市立ときわ保育所の屋上(海抜約14)に避難できるかどうかを調べた。防水用に取り付けている屋根のシンダーコンクリートを撤去し、軽量素材で防水を施せば、固定の荷重が減り、十分に避難施設になりうるという。林理事長は「松を切らずに避難施設を用意する方法はある。市が工事を強行するのであれば、座り込みも辞さない」と強調した。

(静新平成261227日朝刊)
※追加記事
 
松は一本たりとも切らせない

築山問題で住民側が代替案

築造の根拠失われた

 沼津港外港近くの千本松原に計画されている津波避難用人工高台(築山)。市立ときわ保育所隣への築山造成に伴うクロマツ伐採に反対している住民代表六人が二十六日、栗原裕康市長ら市担当者と話し合った。会談は非公開で行われ、終了後、住民側が記者会見した。

 住民側は今月十二日、市長に築山の代替案を提出している。同保育所の図面を基に屋上の防水用に張られた厚さ六㌢のコンクリートを剥がし、FRP(繊維強化プラスチック)などの軽量素材に替えれば強度的に四百人の避難場所になるというもので、一級建築士が積算した。

 一方、市も第二次見直し案を示し、築山の避難場所高度を前回の海抜一五㍍から一㍍下げ、その上に高さ一㍍の展望台を設け、クロマツ伐採を九十本(当初は百五十本を予定していた)から二十四本に減らし、造成後、クロマツ百二十本と照葉樹千二百四十本の苗木を植えるという。

 住民代表で沼津牧水会理事長、松を植えた増誉上人が開山で県の伐採計画から松を守った若山牧水が眠る乗運寺の林茂樹住職は「結果的には第一次修正案を一部修正したに過ぎない。私が『孤高の松』と呼んでいる(樹齢百年以上の)松は切らないで、と要望しているが、予定では切るという」と不満を隠さない。

 住民側が築山を一五㍍にする科学的根拠を求めたのに対して、市は、ときわ保育所屋上の海抜が一四・三㍍で、南側の中部浄化プラント屋上が一四・○㍍なので、双方の高さを超えるものという考えのようだという。

 沼津港の将来を考える有識者会議における「沼津港港湾振興ビジョン」作りに委員として参加した林住職は、「港から千本松原への連続性を要望し、県もそのように考えているにもかかわらず、市が伐採を中止しないのはおかしい」と指摘。

 その上で、「松は一本たりとも切ってはいけない。築山の高さを一〇㍍にすれば一本も切らなくて済む。(私達は)松の命を絶ってはならないと要望当初から言っている。松は塩害、風害から住民を守ってきた」と松原の役割の重要性を強調する。

 十月七日に始まった伐採反対署名は、特別に呼び掛けているわけでもないのに増え続け、二十六日現在、約四千筆に及び、同日の会談時に追加分の二千二百三十四筆が市長に提出された。

 住民側が提出した代替案について市は「提案の内容には間違いはない」と認めているが、市長は「築山を造るのは政策的な問題。やるやらないは市長の権利だ」と語ったという。

 住民側として出席した市の元教育長、長澤靖夫さんが「築山造成の目的は、保育所の子ども達の命を守るためだと市長は言っている。保育所の屋上が避難場所になれば築山を造る必要はないのではないか」としたのに対して市長は強く反論したという。

 林住職は「要望が受け入れられるまで運動は続ける。座り込みも辞さない。築山を造る根拠は(代替案の内容を市側が認めたことで)既に失われている」と固い決意で

いる。

 会談の後、市から報道機関宛てに送られたファックスには「…命を守る緊急避難場所として、また、東日本大震災の教訓をいつまでも忘れないよう、防災上のモニュメントとしての意味を込めて築山を整備する」とあった。

 園児や周辺住民らの避難用の築山が「防災上のモニュメント」と記念碑的扱いでは、実利的な考え方から形式的なものに様変わり。市側が当初指摘していた「防災のシンボル」というのも、海抜一五㍍にする必要性はなく、松原の予定地でなくてもいい。

 ときわ保育所の屋上改修費は概算で五百万円、階段整備を加えても一千万円掛からないという。これに対して築山築造には約六千二百万円が予定され、造成に使う田子ノ浦の浚渫土の費用と運搬費は県が負担するというが、出所は税金。

(沼朝平成261228日号)