山下富美子議員の弁明

5点にわたり懲罰動議に反論

 市議会定例会は、最終日の17日、付託案件に対する委員長報告、それを受けての質疑、討論、採決に先立ち、山下富美子議員(未来の風)への懲罰動議について取り上げた。

 これは山下議員が7日に行った一般質問において不適切な発言があり、議会の権威、品位を傷付けたなどとするもので、動議への討論を前に山下議員が「一身上の弁明」。この後、山下議員が議場を退出し、小澤隆議員(志政会)が懲罰賛成の立場から発言した。

 山下議員の弁明と小澤議員の発言は次のようなもので、必要に応じて注釈や補足を加えた。(はじめに山下議員の弁明。小澤議員の発言については2)

 まず、お断りして.おきたいのは、私は懲罰動議が出される前に、私の一般質問に対する削除は求められておりません。7日の一般質問の後、私の発言について、いくつかの指摘が教育委員会から出されましたが、懲罰における私の一般質問が不適切とは、これまで一度も指摘されず、また文科省に行った報告からも、その指摘がされたとはうかがっていません。

 今後、万が一にも発言者の許可なく一般質問の会議録を削除することがあるとするなら、市民の知る権利を冒涜(ぽうとく)するものです。議長には発言取り消し命令権があり、これが行使されると私に発言取り消しの意思があろうがなかろうが会議録から削除されてしまいます。

 しかし、このような強権を発することがあっていいのでしょうか。かつて沼津市議会の歴史上あったのでしょうか。市民の知る権利を踏みにじる行為としか言いようがありません。

 もしも、そうしたことがあるのなら、どういった権限や根拠に基づいて削除するのか、市民に納得のいくように示していただきたいと思います。

 今回、懲罰動議の発議者から指摘されています、議会の権威と品位を著しく汚したという「教育長、それは大きな間違いですよ」といった発言について、懲罰特別委員の方々が誤解していると思われるので、説明いたします。

 私が「学校の設置者は誰ですか。それは、地方公共団体であって、教育委員会ではありません。学校教育法第2条、学校は地方公共団体が設置、この場合、地方公共団体を代表するのは誰ですか、市長ですか、それとも教育委員会ですか」という質問をしたところ、教育長は「執行機関は教育委員会である」と答弁しました。

 教育長は私の質問に答えず、はぐらかした答弁をしたので、「教育長、それは大きな間違いですよ」と言いました。

 教育長は、私の質問に答えていただけていない。このことへの間違いの指摘が、なぜ議会の権威と品位を著しく汚したと言えるのか、そして懲罰に値するのかわかりません。

 教育長の「執行機関は教育委員会である」という答弁の文言は、まったくその通りです。

 しかし、委員の方々は、私が、教育長が私の質問に答えていないことを「間違っている」と指摘をしたことを、最後まで誤解したまま懲罰の審議をしていたのではないか、と申し上げておきます。

 さらに、議長の命を受けて議会事務局が文科省に確認に行った際に示された見解と私の考えは、何ら変わることはないと思っています。

 まず、懲罰特別委員会の参考人であった議会事務局副参事によると、「地教行法(注・地方教育行政の組織及び運営に関する法律)21条におきましては、教育委員会の所管に属する第30条に規定する学校その他の教育機関の設置、管理、廃止に関することなどを教育委員会の職務権限として規定している」と説明されました。

 しかし、地教行法第21条の冒頭には、「教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で、次に掲げるものを管理し、及び執行する」との前提が示されています。が、説明では、そこが省略されていました。

 加えて、副参事の説明によると、「学校教育法第2条、公立小中学校の適正規模・適正配置等に関する手引で規定する学校の設置者たる地方公共団体の示す範囲はという質問に対し、文部科学省からは、地方公共団体の長は市長」であること、そして、「地方公共団体には、行政機関、執行機関として教育委員会」があること、その上で、「学校の設置者たる地方公共団体の長と教育委員会が密接な関係で進めていくというスタンスであるという説明がございました」と述べています。

 つまり、私が質問した「学校は地方公共団体が設置、この場合、地方公共団体を代表するのは誰ですか、市長ですか、それとも教育委員会ですか」に対する答えは「市長です」と答えて下されば良かったのです。

 以上が私の弁明の大きな一点目。

 二点目。懲罰になった事由について、地方自治法第132条には「普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる議論をしてはならない」、第134条には「普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科すことができる」

 唯一、「議員必携」に懲罰の事由となる事項が7つ挙げられていますが、そのうちのどれに当たるのかについては、(懲罰特別委員会において)再三にわたる江本(浩二)委員の質問に、他の委員からの答えはありませんでした。

 (懲罰動議)発議者の提案である、私の言動が議会の権威と品位を著しく汚したと判断された点について、何が議会の權威を汚し、と品位を著しく汚しと判断された点について、何が議会の権威を汚し、何が品位を汚したのかについて、具体的に審議はされませんでした。

 ある委員から、私が市長や教育長を誹謗中傷し、侮辱するような発言を繰り返したとの指摘がありましたが、その誹謗中傷について具体的に指摘されたのは、教育長の答弁に対する「教育長、それは大きな間違いですよ」という発言と、市長の答弁に対する「大変残念な答弁です」という2点の発言であり、それが、市長や教育長を誹謗中傷し、侮辱する発言を繰り返したというものでした。

 また、他にも私の断定的な言動は無礼であり、侮辱することにもつながる、との指摘がありました。

 しかし、個人の見解を述べること、断定すること、私のこれらの言動が、不当かどうか、法的に誤っているかどうか、その指摘もなかった思いますが、もっと深く議論されるべき問題であったと思います。

 三点目。私が、これまで幾度となく発言の誤りで発言文章の削除と謝罪が議会運営委員会で行われてきたこと、私の発言、議場等での行動、行為について発言の重さや議員が守るべき品位を軽んじているとの指摘がありました。

 また、当選してから複数回にわたり問題の発言があり、発言を削除してきたことは、私の反省が生かされていないとありました。

 このような意見に基づく審議は、今回の懲罰に対する議論の範囲を逸脱しています。

 四点目。先ほど冒頭でも説明しましたが、ある委員が、私の一般質問が終了した後、二度にわたる議長、副議長からの丁寧な説明と文書削除の要請に応じなかったと指摘されていますが、何を指しているのでしょうか。少なくとも私は、「私の発言が、もし間違っているなら、削除に応じます」と言い、「そういうことだね」と念押しもされました。

 また、文科省へ確認に行くと言っていましたので、「私の発言文を持って行ってください」とお願いもしています。私は、どこを削除すべきかどうかについて今もって指摘を受けておりません。

 五点目。最後に(7日の一般質問における)私の「文部科学省に確認をした」という発言が、文科省の誰に対してなのか確認もできない危ういものだったという、ある委員の発言は明確に間違っております。(私は)副議長及び議会事務局に対して、私が直接話した文科省の職員について、その部署、名前について、はっきりとお答えしています。

 最後に、今回の私の言動が、議会の権威と品位を著しく汚し、懲罰に値するのかどうか、もっと議論が必要だったのではないでしょうか。こうした曖昧過ぎる基準で懲罰を科すことは、沼津市民の負託を受け、選挙によって選ばれた議員の言動に委縮効果を及ぼすことになります。

 議会が言論の府であるためには、言論の自由が保障されなければなりません。言論の自由は、民主主義の基本です。 持論を述べることを制限することは、議員の自由な議論に大きな影響を及ぼす危険をはらんでいます。議会は、多様な意見を反映する場として、言論の自由が保障されなければならないと考えます。 私は、市民の、たとえ一人の声だとしても、それが正しいと思えば、その声を市政に届け、当局に改善を求めてきました。私は市民の声なき声に耳を傾け、真摯に取り組む議員でありたいと活動してきました。

 このたびの懲罰は私にとって大変残念であり、受け入れがたいものです。ご理解ください。

 以上をもって一身上の弁明といたします。

【沼朝令和31219日(日)号】

 

   

 

 小澤隆議員の懲罰賛成討論

山下議員は不正確な法令解釈に固執と違反

 私は、山下富美子議員に対する懲罰の動議に、賛成の立場から意見を述べます。

 山下議員による今回の一般質問は、沼津市議会の申し合わせ事項を順守することなく、不十分な調査、聴き取りによって、一面的な理解による不正確な内容で展開されました。乱暴な印象を与え、恣意的で曖昧な、市民の誤解を生むようなものでした。

 そして、一身上の弁明では「削除は求められておりません」と発言がありました。しかし、少なくとも議長から正確さを欠く質問内容であることを指摘されながら、自身の主張に固執して何ら問題がない、としています。仮に誤りを指摘された、その場で、または一度指摘された内容を預かり、自身で再調査された後に誤りに気付き、認め、発言の削除を求めていれば今回の懲罰動議は行われなかったはずです。

 しかしながら山下議員から、そうした申し出がなかったことから、動議の提出となりました。

 そして、懲罰(特別)委員会の中で山下議員は一身上の弁明をされ、「学校の設置者は市長か、教育委員会なのかという点について答えていただけなかったので、『教育長、それは大きな間違いです』と確かに言いました。教育長は、残念ながら私の質問にお答えいただけていない。このことへの間違いの指摘が、なぜ品位に欠けるのか私には全く分かりません」と述べられました。

 答弁が食い違っているという意味で教育長に間違いだと言った、教育長が私の質問に答えていないから間違いを指摘した、懲罰には及ばないというような主張をされているものと思います。

 しかし、その主張は到底容認できません。山下議員が示されたやり取りの前後の発言を踏まえれば、その主張は、あまりにも無理筋で、あまりにも都合のいいものだからです。自身の発言と、それに対する答弁の、ほんの一部だけを抜き出して、都合のいい主張をされているように思います。

 あえてここで、「答弁が食い違っているという意味で教育長に間違いだと言った」などといった山下議員の主張を強く否定いたします。そのような理由が懲罰に値しないのは当然だったのです。ましてや、厳しく教育長や市長をただしたからだとか、議会の中で少数派だからとか、そういった理由で動議が行われるはずもありません。

 なぜ、今回の事案が懲罰に値するのか、何が問題だったのか、今一度それを示します。

 まず、山下議員の法令解釈は不正確です。そして不正確な法令解釈からくる自身の発言を、文科省からの聴き取りなどとも取れる形で披露されています。勝手な拡大解釈をしながら行われました。

 例えば、「学校の設置者は誰ですか、それは地方公共団体であって教育委員会ではありません」という発言や、「この各設置者とは地方公共団体であり、つまり市長のことです」といった部分です。

 ここでいう学校の設置者である地方公共団体には教育委員会が執行機関として含まれています。地方公共団体が市長だけを指しているのではありません。山下議員の「教育委員会ではありません」という発言は不正確な解釈によるものです。

 山下議員は地方自治法第149条の「普通地方公共団体の長は公の施設を設置し管理し及び廃止すること」という部分だけを捉えて、地方公共団体イコール市長と認識しているように思いますが、言うまでもなく、地方自治法や学校教育法、教育基本法は、憲法を頂点として存在する一般法です。一般法は、あくまで広い意味で適用されるものであり、特定の事項について特別法が制定されていれば、特別法が優先されるのが法律の立てつけです。

 このケースでの一股法は地方自治法で、特別法は「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」、略して「地教行法」です。地教行法の第21条に、学校の設置・管理・廃止は教育委員会の所管であることが示され、第22条に、首長が行えるのは教育財産を取得し及び処分することと、教育委員会の所掌に係る事項に関する契約を結ぶことが

職務権限として示されています。

 学校は、地方公共団体の執行機関である教育委員会が設置や廃止を決め、首長は教育委員会による設置や廃止の決定を受けて、契約や予算の執行を行うのであります。

 山下議員の法令解釈は、特別法は-般法に優るという特別法優先の原理を踏まえておらず、あまりにも不正確で乱暴です。そして、文科省に山下議員が主張されるような見解がないことは、議長の命による議員派遣でも確認が取れています。

 一方で山下議員は、自身の認識が文科省のお墨付きであると他者に誤認させるような発言をされています。そして、文科省がお墨付きを与えているとする自身の主張を認めない教育長に対して、「それは大きな間違いですよ」と発言され、同様に自身の主張を認めない市長に対して、地方自治法

244条の2に規定する、「公の施設の設置、管理及び廃止により学校の設置者たる地方公共団体」という部分を拡大解釈し、市長が、その権限を議会の議決によって執行できるものとしながら、「これ文科省にも確認したんですね。残念です」との発言をされています。

 山下議員は、不正確な認識を披露して、あたかも自身の認識について、そのお墨付きがあるかのごとく文科省の名を挙げ、市長、教育長の答弁を間違いだ、残念だと断じることで市長、教育長を侮辱し、また、文部科学省と相互の信頼関係及び沼津市に対する市民の信頼を傷つけてしまっているのです。

 また、こうした不正確な認識による山下議員の主張が、第一、第二地区や、その他の地区における今後の学校の適正配置に悪影響を与える恐れも十分にあるのです。

 これら一連の発言が、議会の権威と品位を汚しているのです。

 山下議員の一連の発言を認めるということは、市民の皆様への誤ったメッセージを沼津市議会から発信するということです。決して看過できるものではありません。

 憲法において保障されている言論の自由は、極めて大切なものであります。しかしながら、議会において無制限に、偏見による認識を語ってもよいのでしょうか。これは議会で、いくらでも嘘をついてもよいということにもつながってしまいます。さらには、議会において他者を中傷してよいはずもありません。

 一般質問の発言について議長から問題点の指摘があっても山下議員は問題点を受け入れることも発言を訂正することも、ついにありませんでした。

 懲罰がなく、そのままにしておくのだとしたら、市議会として問題をはらんだ表現を認めてしまうということになりかねません。

 このたび、なぜ一人の議員に対して懲罰を科すことを議論してきたのか。 たった一人の議員に対して、いわゆる多数派が数の力で抑圧したいからでしょうか。たった一人の議員に対して嫌がらせをしたいからでしょうか。たった一人の議員から言論の自由を奪いたいからでしょうか。そのいずれも違います。

 沼津市という公の発展を心から願い続ける者が、一人の人間を攻撃するため.に、ただ言葉尻を捉一えるだけで、議会や委員会のたくさんの時間、たくさんの労力を利用しようなどという考えを持つのでしょうか。

 繰り返しになりますが、個人攻撃のためではなく、あくまでも、この沼津市議会のために懲罰が必要です。

 以上、今回の山下議員の一般質問の内容は、地方自治法第132条「言論の品位」、沼津市議会会議規則第5章規律第152条「品位の尊重」で規定する沼津市議会の品位と権威を著しく汚すものであり、十分に懲罰に値するものであることを改めて申し上げつつ、山下富美子議員に対する懲罰の動議に対する賛成の討論といたします。

【沼朝令和31219日(日)号】