古墳保存問題で各委員が意見
道路建設と価値観の相克どこで調整
プラサヴェルデで三日に開かれた「高尾山古墳保存と都市計画道路(沼津南一色線)整備の両立に関する協議会」の第1回は、これまでの経緯や今後の検討方針を確認する場として位置付けられて議論が行われたほか、これまで古墳の現状保存と道路整備の両立は技術的に不可能としていた市側から、実現可能な代替案を提出する意向が示された。協議会には五人の委員とアドバイザー二人が出席した。出席者の主な発言要旨は次の通り。
保存の場合、活用も課題に
市長「関心、一過性にしないで」
論を始めるに当たって ▽栗原裕康市長=この協議会は文字通り、「両立」のために開かれた。高尾山古墳については全国からも注目され、報道関係者も多く来ているが、古墳への関心が一過性のもので終わらないように願いたい。きょうの議論が沼津のまちづくりにつながるものになることを期待する。
▽大橋洋一委員(学習院大法科大学院法務研究科長)=公共事業は一回決まると、なかなか変われない。今回のケースは市長の英断で一時停止になった。現代的な判断とも言える。高尾山古墳は駿河を飛び越えて全国的な価値がある。
▽難波喬司委員(県副知事)=価値をどう見るかが問題。論点がどこにあるか見極める必要がある。沼津駅鉄道高架事業では投資効果が判断材料となった。しかし、今回は古墳の歴史的価値と道路の経済的価値の対立だ。どこで価値判断をしていくか、どちらの価値が高いのか。それぞれの人が価値を主張するが、それはその人にとっての価値に過ぎず、正しいとは限らない。最後は事業者が価値判断する。その判断の選択肢を狭めるのが協議会の役割ではないか。
▽矢野和之委員(文化財保存計画協会代表取締役、日本イコモス国内委員会事務局長)=古墳の歴史的な価値だけでなく、保存されるとしても、その後、どうやって活用するかを考えることも重要だ。
▽久保田尚委員(埼玉大大学院理工学研究科教授)=今朝七時に現地を見に行ったら、交通混雑対策のために子ども達が集団登校していた。私の子どもには、こんな道を歩かせられない。これを議論のベースに考えるべきだ。道路建設と古墳保存のどちらもが百点を狙えないかもしれない。双方が八十点でいいという気持ちがなければ、両立は難しいだろう。
市側代替案について
▽大橋委員=問題はテクニカル(技術的)なものになっている。代替案があるとしたら、どうなのか。沼津市として出してほしい。
▽藤岡啓太郎副市長=前提条件を変えない限り、代替案は見つからない(この後、変更可能な前提条件を説明)。
▽久保田委員=前提を考えれば、好ましい結果になるのではないか。ただし、走行車両の最高速度を落とすことになると、道路全体のどの地点から落とすことにするのかが安全上の問題となる。車線数については、四車線道路は二車線道路の二倍の通行が可能になるという単純な計算ではなく、四倍となる。これは重要な問題だ。
▽矢野委員=周溝の外から五㍍離れたところに道路を造らないといけないという条件にこだわる必要はないのではないか。
▽藤岡副市長=(四車線道路から二車線道路に設計を変更するため必要な交通量推計調査の方法を問われて)沼津南一色線の交通量推計は、一日一万二千台より上か下かだけを判断するのが目的なので、費用を考えるとエリアを限定して簡易に行う予定だ。東駿河湾環状道路の整備の進展が交通量に与える影饗も踏まえる。
▽矢野委員=隣接する神社敷地(高尾山穂見神社と熊野神社)と合わせた古墳の利活用が重要だろう。史跡公園など、古墳をまちづくりの中に位置付けた積極的な案も次回で提示してほしい。沼津のシンボルとして古墳を活用することを考えるのが大事ではないか。
アドバイザーの意見
▽神田昌幸氏(国土交通省街路交通施設課長)=次回に提示される代替案では、通学路の安全を織り込む必要がある。他の道路網との関係も見据えなくてはならない。速度を落とすという変更は、必要になってくるだろう。どの地点から落とすのかが課題になる。これも他の道路との関連を考慮するのが重要だ。
車線数を減らすのは、冒険的な試みだ。安全のための様々な措置が必要になるだろう。
▽禰宜田佳男氏(文化庁主任文化財調査官)=今回の協議会は文化財保存の上でも、きわめて珍しいケースだ。高尾山古墳の重要性は言うまでもない。価値を損なわない形での現状保存が望ましい。
高尾山古墳は墳丘が高いのが特徴で、これほどの高さの事例は他には少ない。これが高尾山古墳の価値を高めている。墳丘を残すことは、とても重要だ。交通安全の問題については、通学路の変更などによる安全確保はできないのか。
【沼朝平成27年9月5日(土)号】
沼津市HPの議事録です。クリックしてお読みください。